Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
 さっと短時間でシャワーを浴びて部屋に戻ると、予想通りの光景にため息が漏れた。永瀬が部屋の真ん中で大の字になって穏やかな寝息をたてている。
 無防備な姿。それは風呂上りで寝間着姿の私も同じか。薄手の毛布を持って永瀬にかける。
 永瀬がウチに寝泊まりすることはよくあることだった。永瀬とは出会った時から互いに異性を意識しない付き合いで、その上彼氏いない歴5年の私にとって彼がウチの泊まったところで特に困ることはない。……ど真ん中で大の字は邪魔だけど。
 でも男っ気のない私と違って永瀬はコンスタントに異性との交際を繰り返している。いつも長続きはしないようだけど。深夜に、一応異性である私の家に泊まろうとしているところを見ると今はフリーなのかな?
 女受けのよさそうな端整な顔立ち、175センチ以上はありそうな身長とスマートな体型、誰とでもすぐに打ち解けられる高いコミュニケーション力。私は派手な人はタイプじゃないけど、モテるのは納得。
 じっと永瀬の顔を眺めていたら自然と大あくびが出た。……眠い、寝よう。
 春に短く切った肩上の長さのボブをタオルドライで簡単に乾かして横になろうとベッドに腰掛けた時だった。ごそごそと動く気配。永瀬が目をこすりながらゆっくりと起き上がった。

「あれ? 俺寝てた……?」

 キョロキョロと部屋を見渡して私を見つけると「あ、風呂出たんだ」と言った。

「どうするの? 帰る? 私はもう寝ようかなって思ってるんだけど」
「いや、今日はおまえに話があるんだよ」

 そういえば。先に私に用事があって連絡をよこしてきたのは永瀬の方だった。

「なに?」
「なぁ、俺たちそろそろ結婚しない?」

 結婚……? 酷い聞き間違いをした。疲れてるんだ……。もう一度尋ねる。

「用事ってなに?」

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