Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
「馬鹿だぁ……」

 目を閉じて片腕で顔を覆った。
 失恋してもすぐに立ち直れて引きずらなかったのは、永瀬がいつも隣にいたからだ。
 元彼と別れてから人が変わったように仕事が楽しいと思えるようになったのは、部署が変わって仕事への取り組む姿勢が変わったからだけじゃない。
 元彼と別れて、異動になったタイミングで永瀬と過ごす時間が増えた。
 愚痴があればすぐに吐き出せて、小さな悩みは笑い飛ばしてくれる相手がいた。彼女がいるのかいないのかいつもよく分からなかったけど、それは会いたいと思って連絡を入れればいつでも会うことが出来たからだ。もしかしたらいつでも私のことを優先してくれてたんじゃないかといううぬぼれがさらに私の涙腺を刺激する。
 今私の中の感情のすべてを支配するのは永瀬に会いたいと言う気持ちただ一つ。
 いつも距離が近すぎて、一緒に過ごす時間も居心地が良すぎて気付かなかった。離れてみて、たった数日間でどれほど自分の中で大きな存在だったかが分かったよ。思い出すだけで恋しいと言う思いが溢れて止まらない。

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