Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
立ち上がった永瀬の影が私を覆って、目を合わせたままストンと私の隣に腰を下ろした。
「俺、おまえに決めた」
「なにを?」
「結婚相手」
結婚相手。永瀬はそう語尾に音符マークがついていそうな軽さでにんまりと笑って言った。
……はて?
「用事ってな……っ」
念のためにもう一度確認しようと同じ質問をぶつけようとした時だった。
肩を押されて景色が反転。上から永瀬の影が私を覆った。それでも私は無抵抗。だって、私たちの間に異性を意識するような出来事が起こり得るわけがないから。今までずっとそうだったから。
突如、壁越しにうっすら聞こえてくる甘ったるい声に永瀬と目を合わせて固まる。
「ん~、なぁに? 眠いよ……ちょっと……もぅ! やぁ~だ。やーん、どこ触ってるのぉ? ナオキったらエッチなんだからぁ~!」
あぁ、忘れていた。この部屋に最近できた唯一の不満点。先週、若いカップルが隣に越してきて……
「さっきしたばっかなのに……もうしたいの? しょうがないな……あっ、や、ああん!」
いちゃいちゃタイムがはじまったらしい。どうやら第二ラウンド……ってそんなことはどうでもよくて。どうなってるの! 今日こんなんばっか!
そして今私の正面には目と鼻の先に永瀬の顔。長い付き合いだけど、こんなにも至近距離でこの人の顔を見るのは初めてだった。
「……すげぇのが隣にいるんだな」
「さ、最近隣に越して……」
「隣も仲良くやってるみたいだし、な。俺たちも」
「なに言ってんの……?」
「これからはおまえのこと名前で呼ぼうかな」
「綾」。耳元で囁くように自分の名前を呼ばれて身が硬直する。
川島綾(かわしま あや)。彼氏いない歴5年、男っ気ゼロ、気づけば三十路目前。
恋愛に関しては浮いた話一つないけど、仕事にはやりがいを感じて不満のないそれなりに充実した日々を送っていた。
そんな地味ながらも平和な毎日が、この日を境に一変することとなる。
「俺、おまえに決めた」
「なにを?」
「結婚相手」
結婚相手。永瀬はそう語尾に音符マークがついていそうな軽さでにんまりと笑って言った。
……はて?
「用事ってな……っ」
念のためにもう一度確認しようと同じ質問をぶつけようとした時だった。
肩を押されて景色が反転。上から永瀬の影が私を覆った。それでも私は無抵抗。だって、私たちの間に異性を意識するような出来事が起こり得るわけがないから。今までずっとそうだったから。
突如、壁越しにうっすら聞こえてくる甘ったるい声に永瀬と目を合わせて固まる。
「ん~、なぁに? 眠いよ……ちょっと……もぅ! やぁ~だ。やーん、どこ触ってるのぉ? ナオキったらエッチなんだからぁ~!」
あぁ、忘れていた。この部屋に最近できた唯一の不満点。先週、若いカップルが隣に越してきて……
「さっきしたばっかなのに……もうしたいの? しょうがないな……あっ、や、ああん!」
いちゃいちゃタイムがはじまったらしい。どうやら第二ラウンド……ってそんなことはどうでもよくて。どうなってるの! 今日こんなんばっか!
そして今私の正面には目と鼻の先に永瀬の顔。長い付き合いだけど、こんなにも至近距離でこの人の顔を見るのは初めてだった。
「……すげぇのが隣にいるんだな」
「さ、最近隣に越して……」
「隣も仲良くやってるみたいだし、な。俺たちも」
「なに言ってんの……?」
「これからはおまえのこと名前で呼ぼうかな」
「綾」。耳元で囁くように自分の名前を呼ばれて身が硬直する。
川島綾(かわしま あや)。彼氏いない歴5年、男っ気ゼロ、気づけば三十路目前。
恋愛に関しては浮いた話一つないけど、仕事にはやりがいを感じて不満のないそれなりに充実した日々を送っていた。
そんな地味ながらも平和な毎日が、この日を境に一変することとなる。