Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
「今日は本当にありがとうございました。とっても楽しかったです!」
「あぁ、うん。そうだね……」

 聞き覚えのある男女二人の声と組み合わせに咄嗟に建物の陰に身を隠す。
 可愛い彼女が、頬をほんのり赤く染め何度もペコペコと頭を下げて手を振って立ち去っていく。以前に、永瀬と一緒にいるところを見たことがある。彼の後輩と思われる女の子だ。その彼女に手を振る永瀬の後ろ姿を見ながら、ドキドキと心拍数が急激に上がっているのを感じる。
 こんな早朝に二人で歩いているってどういうこと……? 今まで、ずっと一緒にいたということ……?

「……ぅわ! なんだおまえ突然……!」

 振り返り私の姿に気が付いた永瀬が驚きに声を上げる。
 咄嗟に頭に思い浮かぶのは、細かい荷物を取りに来たついでに通りがかっただけだという言い訳の言葉。でも視線を上げて永瀬と目を合わせたら言い訳はすぐにどこかへ消えてしまって、再会できて嬉しいと言う思いが勝ってしまった。だから、

「今の女の子と、ずっと一緒にいたの……?」
「……へ?」

 開口一番に出たのは、今の女の子との関係について追求するものだった。

「一晩一緒にいたっていうこと? ねぇ、そうなの?」
「どうしたんだよ、おまえ、突然現れて……」
「答えてよ!」
「き、昨日部署内の飲み会だったんだよ。連休前だからハメはずす奴ばっかで終電がなくなった後輩たちに付き合って朝まで漫喫にいたんだよ。さっきの女と二人きりじゃねえよ……」
「……そう」

 ほっとしたら安心感からか泣きそうになった。どうしよう、自分じゃないみたいだ。永瀬に会ったら色んな思いが込み上げてきてしまった。

「……大阪、行ったんじゃねえの?」
「会いたかったの」

 今のこの気持ちを抑えられない。切なさが入り混じった、相手を恋しいと思うこの気持ちは……

「私、永瀬がいないとだめなの。やっと、気づいたよ……!」

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