Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
 永瀬の自宅へ連れられ、ベッドに寝かせられた。永瀬の匂いがする。今までは無意識に感じていたどこかほっとする落ちつく匂い。意識して吸い込むとドキドキしてくる。

「ほれ、薬。この間おまえが買ってきてくれたのが残ってる」
「……ありがと」

 起き上がって薬と水の入ったグラスを受け取る。永瀬は腰を下ろすと掛け時計を見て「朝か」と呟いた。

「小腹減ったなー。アイスがあったかな」
「あ、私も食べたい」
「何味?」
「チョコ」

 立ち上がった永瀬が冷蔵庫からアイスを取り出して戻ってくる。そして私にバニラ味の棒アイスを手渡した。

「チョコって言ったよね!?」
「バニラしかねぇもん」
「……だったら、聞かないでくれるかな」

 ははっと笑う永瀬につられて自分の頬も緩む。

「やっぱ、おまえといると楽しい」
「からかいがいがあるって?」
「それだけじゃなくて。居心地がいいこの空気も好きだ。手離したくない」
「ど、ど、どうしたの急に……その割には、私が大阪行くってなっても引きとめな……」
「綾だってそうだろ? 俺と離れて寂しくて会いたくてたまらなかっただろ?」
「……ん?」

 な、なんだろう、この違和感。踊らされているようなこの感じ……。

「ね、ねぇ。もしかして……最初からこうなること、分かってた……?」
「なんのことー?」
「も、もしかして、突然、あんなことしたのって……」
「あんなことって?」
「き、き、き……す」

 永瀬が恥ずかしさから口ごもる私を見て笑いをこらえているのが分かる。それを見て私は頭に血をのぼらせる。

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