Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
「キスしたのは! 転勤を迷っている私を煽って大阪と言う逃げ道に向かわせようと仕向けるため!?」
「そういうわけじゃ。だっておまえ行きたがってたじゃん」
「ま、まぁ少しは……」
「ま、俺は。さっさと行っちゃえばいいのにって思ったけど」
「やっぱり……」

 手離したくないって言ったのに、矛盾してる!
 永瀬はベッドの脇に肘をつき、私を見上げてにっこりとほほ笑んだ。

「思った通りだ。すぐに戻ってきた」
「戻れないよ! また大阪に戻らなきゃなんないんだから!」

 ふてくされながら私はベッドに横になって顔を背ける。
 もう……! 私ばっかり振り回されて、ほんとに、永瀬はどこまで本気なの!? ここまできて、からかってるだけなんてこと、ないよね……?
 身体にずっしりとした重みを感じる。永瀬が私の身体に腕を乗せ顔を背ける私の顔を覗き込んでくる。

「さっきヤキモチやいてただろ? 可愛いとこあるじゃーん」
「うるさい! うるさい! うるさい!」

 顔をシーツにうずめて耳を塞ぐ。足はジタバタさせて子供みたいだ。

「キスをしたのは」

 その言葉にピクリと反応して顔を上げる。

「したいって思ったからだよ。言ったじゃん。ずっとそう思ってたって」
「……その、ずっとって」

 前にも同じようなことを言っていた。とっくに女として見てるとも言われた。その言葉は本当なの? ちゃんと説明してほしい。

「まずは寝たら?」
「……気になる」
「熱出して、クマ作ったやつれた顔してさ。その顔をまずはどうにかしろよ」

 無理やり身体を起こされる。薬と水を再び手渡され、大人しく従って薬を飲む。薬を飲み終えた私を見つめる永瀬の瞳がとても優しくて穏やかな笑みを浮かべているから、ドキンとした胸の鼓動と一緒にまた少し熱が上がってしまった。
 横になって瞳を閉じる。安心できる匂いに包まれて、ひんやりとした体温が気持ちいい大きな手が私の手を握った。

「目が覚めたら、俺がどんだけおまえのこと好きかって教えてやる」

 声が聞こえた時私はもう半分夢の中でその言葉が現実か夢かの判断は出来なかったけど、起きたらはぐらかされた話の続きを自ら切り出そうと思う。

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