Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
 バスルームを出るとタオルで身体を拭いて私は新しい洋服に着替える。シフォン素材のノースリーブブラウスシャツに七分丈のクロップドデニムといった涼しげでラフな格好。

「俺も着替えたいんだけど」
「帰ればいいじゃん。近いんだし」
「一緒にくる?」
「もう移動は……」

 少し家でゆっくり休みたい。
 私は服を着て、永瀬は下半身にタオルを巻いて部屋に戻るとガチャッと扉の開く音がして、隣の部屋から男女の声が聞こえてきた。相変わらずこの部屋は壁が薄い。
 お隣さんが帰ってきたのが丸わかりだ。
 ……え、隣って……。

「あっ……やぁーん! いきなり、そんな……!」
「お尻をこっちに、そう……」
「だ、だめ……! 立ってられない……!」

 予想を裏切らない展開に永瀬と目を合わせる。

「すげー……。帰ってきて速攻?」
「いや、私達もそうだったよ……?」

 隣から聞こえてくる、何をしているのかが細かいところまで簡単に想像できる卑猥な会話を聞きながらしばらく無言で目を合わせる。

「永瀬のウチ、行こっか……」
「……あぁ」

 二人で頬を染めあう。素早く支度を済ませ外に出ると、なんだか無性に可笑しくて大きな声で笑いあった。

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