Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
「そういえばさ、二人きりで遠出するのは始めてだよね?」
「お、言われてみれば」

 友達だった頃には絶対出来ない二人きりの旅行。ましてや温泉なんて。異性の友達と来てもお風呂は別だし部屋だって一緒にするわけにはいかない。……何も楽しくないや。

「私たち、ほんとにもう以前までの関係とは違うんだ」
「まだそんなこと言う?」
「だ、だって……永瀬とこんなことになるなんて夢にも思わなかったんだもん」
「俺だって」
「アレかな。恋愛と結婚は別ってやつ」

 誰よりも信頼できて本音を話せる。自分が自分らしく自然体でいられる。わがままもなんでも受け入れることが出来て……

「自己中な俺様とか。絶対に付き合いたくないし」
「俺だっておまえのわがままや天然に振り回されるのはごめんだね。……でも、実際はそれを普通に受け入れて楽しんでる自分に気づいた時、他の女とは違うなって思ったよ」

 あぁ、同じだって思ったら胸がきゅんとなった。

「特別ってこと?」
「うん」
「……今日もはっきり即答だね」
「俺たぶん。おまえに嘘言ったことないよ」
「言わなくてもいいこともはっきり言うしね……でもそれたぶん。私も」

 同時に俯き気味に笑みをこぼす。なんだか照れ臭い。くすぐったい。
 一緒にいると安心できる居心地の良さだけじゃなくて、今は隣を歩くだけで小さなときめきもプラス。世の中にはいろんな恋愛の形があると思うけど、これが私たちのカタチ。
 ……柄にもなく久々の恋愛に浮かれているらしい。少し落ち着こう。

「ねぇ、ノド乾いた。あ、あそこにあるの喫茶店じゃない?」

 和風の建物が立ち並ぶ街並みにマッチした古い歴史を感じさせる雰囲気のある小さな喫茶店を見つけて、しばらくそこで時間を潰した。

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