Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
本社に来て一か月。だいたいの仕事の流れを掴み、新居での生活もはじまった。ようやく地に足がついてきた感じだ。
「川島さーん。さっきの打ち合わせで出た京都の件、概算でいいから見積もり出してもらえる? あと来週末の出張の新幹線チケットの手配お願いね」
「はーい、分かりました」
休憩時間以外息つく暇もないと言っても過言ではない。上司から次々に指示が降ってきて自分で優先順位を考えて一つずつ片付けていく。唯一の救いは、ミスをしても怒鳴り散らすような怖い上司じゃないということと、ミスをしても落ち込んでいる暇がないということかな……。
「川島さんですよね? ちょっといいですか?」
集中しているところに背後から女性の声。振り向くと初対面の女性が立っていて「はい、川島です」と答えると彼女は小さく会釈をした。すると彼女の背後から見覚えのある男性が現れた。
「悪かったね、わざわざ。案内ありがとう。もう戻っていいよ」
男性に戻っていいと言われ女性は丁寧に頭を下げて立ち去った。
「いやぁ、本社に来てくれてたって聞いてたけど、なかなか会いにこられなくてごめんねぇ」
「い、いえ……」
突然のその人物の登場に一気に緊張が高まった。
女性社員に案内を頼み、わざわざ私の席まで会いに来たのは、社員旅行の3泊5日の間ほぼ毎日を一緒に過ごした社長だった。
歳は自分の親と同じくらいだろう。丸々とした体形とおっとりとした優しい風貌は親しみやすい。想像するようないかにも社長ですと言った威厳のようなものはなく、旅行中、当時の上司が彼が社長だってことを教えてくれなかったらきっと分からなかった。
「少し話いいかな? 忙しい?」
「いいえ」
本当は忙しいけど……社長の指示を断るわけにはいかないよね。私はすぐに立ち上がった。
「川島さーん。さっきの打ち合わせで出た京都の件、概算でいいから見積もり出してもらえる? あと来週末の出張の新幹線チケットの手配お願いね」
「はーい、分かりました」
休憩時間以外息つく暇もないと言っても過言ではない。上司から次々に指示が降ってきて自分で優先順位を考えて一つずつ片付けていく。唯一の救いは、ミスをしても怒鳴り散らすような怖い上司じゃないということと、ミスをしても落ち込んでいる暇がないということかな……。
「川島さんですよね? ちょっといいですか?」
集中しているところに背後から女性の声。振り向くと初対面の女性が立っていて「はい、川島です」と答えると彼女は小さく会釈をした。すると彼女の背後から見覚えのある男性が現れた。
「悪かったね、わざわざ。案内ありがとう。もう戻っていいよ」
男性に戻っていいと言われ女性は丁寧に頭を下げて立ち去った。
「いやぁ、本社に来てくれてたって聞いてたけど、なかなか会いにこられなくてごめんねぇ」
「い、いえ……」
突然のその人物の登場に一気に緊張が高まった。
女性社員に案内を頼み、わざわざ私の席まで会いに来たのは、社員旅行の3泊5日の間ほぼ毎日を一緒に過ごした社長だった。
歳は自分の親と同じくらいだろう。丸々とした体形とおっとりとした優しい風貌は親しみやすい。想像するようないかにも社長ですと言った威厳のようなものはなく、旅行中、当時の上司が彼が社長だってことを教えてくれなかったらきっと分からなかった。
「少し話いいかな? 忙しい?」
「いいえ」
本当は忙しいけど……社長の指示を断るわけにはいかないよね。私はすぐに立ち上がった。