Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

17 モテ期到来?

 貴重な残業のない日は、まっすぐ家に帰って普段見られないテレビを見てのんびり長風呂でもしたい。
 それなのに定時で退社することが出来た今日は、つい先日ある人物に半強制的に番号交換をさせられたその息子と食事に行く約束をしていた。その約束にも、誘いに私はイエスと一言も返事をした覚えがないのだけどはっきり断らなかった私も悪い。食事は決定事項、すでに店の予約も済んでいた。

「今日は突然誘ったりしてごめんなさい。父が、誘えってうるさくて……」
「い、いいえ」

 父とは社長のことだ。そして私は今その社長の息子と一緒にいる。

「仕事は大丈夫でしたか?」
「はい、なんとか。行けるか行けないかはっきりしない返事をしてすみませんでした……」
「いいえ。仕事なら仕方がないですよ。でも本当に、突然すみません」
「いいえ……」

 あまりに申し訳なさそうに何度も謝られ自分が悪いことをしている気分になる。
 社長の息子である秀則さんは、社長によく似て穏やかでおっとりとしていてとても礼儀正しく社長が言っていた通り性格は良さそうだ。頼りないと言っていた部分もなんとなく気弱そうな雰囲気から伝わってくる。体型は社長と真逆で細身で色白で儚げ。眼鏡をかけていて……外見と雰囲気だけなら私が理想としていた男性に近いかもしれない。
 ただ性格は正直苦手かな。もっとこう、グイグイ引っ張ってくれるような強気な人が……って。脳裏に浮かぶ一人の男。好きな人を思い出した時に隣に違う男性がいるときのせつなさときたら。今は永瀬のことを考えないようにしよう。会いたくなってもすぐに会える距離にいないのだから。

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