Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

19 逆プロポーズ

 両手の自由を奪われてベッドに横に倒される。両手が使えないのがこんなに不便だなんて。腹筋を使って起き上がろうとしても、身体を捩って横になろうとしても、上から押さえつけられてしまえば何も出来ない。
 唯一自由が利く口で必死の抵抗を見せる。

「ちょっ……ちょっと待った! 杉浦さんとはただ偶然会っただけなんだってば! 歩いてただけじゃん!」
「もう一人は?」
「もう一人は……」

 ふと秀則さんとの約束を思い出す。
 男に手を引かれ強引にエレベーターに乗せられた私の事情は察してもらえたと思うけど、さすがに、一言も謝罪の言葉もなく約束をすっぽかすなんてことあまりに非常識だ。

「お願い、一言だけ、彼に謝罪をさせて……!」
「おまえ、今の状況でよくそんなことが言えるな」
「……痛っ」

 圧しかかってきた身体に、後ろで組んだ手が自分の背中とベッドの間で潰されて痛みを感じる。

「まずは俺に謝れよ」
「な、なんで……」

 自分が永瀬を怒らせるようなことをしたのは十分に理解している。でも、私の話をちっとも聞こうとしない永瀬に腹を立てている自分がいて、素直に謝る気になれなかった。

「どうしたの!? なんだか今日変だよ!」

 そうだよ、変だよ。よく考えてみれば私がただ別の男性と一緒にいたくらいで、こんな風に怒りをぶつけてくるような人間じゃないはずだ。鼻で笑うくらいの余裕のある態度で「どうしてヤキモチ妬かないの!?」って……私が腹を立てる。これが今までの私たちの付き合いから考えれば自然なパターンだ。

「あぁ、そうかもな」
「な、答えになってなっ……! あ、やっ、やめっ……!」

 首筋に唇を押し付けられて、洋服の上から胸を揉まれもう一方の手がストッキングにかかる。脚をばたつかせて抵抗をしてもそれは逆効果で簡単に脱がされてしまう。
 ケンカしながら、身体の自由を奪われた状態で抱かれるの? そんなの私は嫌だよ。
 あっという間に下ろされた下着が片足首に残ったところで最後の抵抗。

「……っ、嫌っ! ほんとに嫌だっ、やめてっ、お願い……っ!」

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