Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

20 嬉し泣き

「ねぇ、今日は泊まってくでしょ?」
「んー。どうしよっかな。どうしてほしい?」
「もう、いじわる!」

 服も着ないで裸のままベッドに横たわっていた。永瀬は身体を起こすと振り向いて私を見下ろしてにっと笑った。

「俺がおまえをウチに連れて帰るってのもアリかな」
「今から? どうせまたすぐにこっちに帰ってこなきゃいけないんだし……永瀬がウチに泊まっていったほうが」
「誰が帰すって言ったんだよ」
「え……」
「強引に攫って欲しいんだろ?」
「そ、それは……」

 たしかにそう言ったけど……実際、月曜になればまた仕事に行かなきゃいけないし……正直、今攫われても困る。困惑する私の顔を見て、なぜか永瀬はまた笑った。そして脱ぎ捨てた服を拾って身に着けていく。すべて身に着けるとごろんとまた私の隣で横になった。

「冗談だよ」
「で、でも……」
「待つよ。別に今すぐに嫁にこいって言ってるわけじゃないし」
「でも」
「気持ちの整理も、身辺整理も色々あると思うし」
「そんなこと言ってると……私また、迷って決意できなくなって……」
「その時は無理やり奪いに来る」
「……」
「これでいい?」

 隣で仰向けになる永瀬に身を寄せて首筋に顔をうずめた。

「大好きなの。この気持ちは本物だから」
「……え。どうした急に」
「さっき勢いで……色々。永瀬しかいないとか、結婚しようとか言っちゃったけど……!」
「うん」
「全部本当だから。絶対に」
「……うん」
「だから不安になることなんてないんだよ。私を信じてもうちょっとだけ時間をちょうだい」

 いつも堂々として弱気になっているところなんて見たことがないけど、さっき永瀬がふと漏らした本音が気になった。不安を感じていたのは自分だけじゃないんだ。
 ぎゅっとシャツを掴んでしがみつくと「分かった」と優しさが感じられる声が降ってきて手が私の頭にポンと置かれた。
 腕枕をしながら髪を梳いて撫でられる感触が心地よくてしばらくじっと相手の熱を感じながら目を閉じた。しばらくして腕枕をする腕がぴくりと動いた反動で目を開ける。

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