Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
永瀬は疑問に首をかしげる私を見てため息交じりに小さく笑った。そして「綾」と私の名前を呼ぶと身体をこちらに向けて真正面から私の目を見据えて言った。
「春からまた、俺たち一年生だな」
「う、うん……」
永瀬は実家の旅館の跡取りとして、私はその嫁として夢にも思わなかった未知の世界へ足を踏み入れることになる。仕事を辞めるって決めた時に覚悟は決めた。
「俺たち一年生」。その言葉に忘れていた、というより封印していた恥ずかしい過去の記憶が少しずつ蘇ってくる。あぁ、私……
「慣れないことばかりで大変かもしれない、辛い思いをすることもあるかもしれない。でも俺がいるからな、安心しろよ」
照れくささをごまかすかのように少しおどけた様子でそう言うけど、ちっとも笑えなくて、代わりに目頭がジンと熱くなる。
入社一年目。仕事はちっとも楽しくなくて苦痛で仕方がなかったけど、いつでも明るい永瀬の後ろにくっついていたおかげで人間関係はうまくやることができた。内気だった私をいつも強引に引こうとするから反発して喧嘩ばかりしていたけど、実はとても助けられていた。部署が異動になってからも、仕事に夢中になってがむしゃらに頑張ってこれたのは永瀬の存在があったからだということは転勤になって離れた時に嫌というほど思い知った。
何も、不安になることはないじゃない。私は永瀬さえ側にいてくれたらどんなことだって乗り越えられる。
「うん……!!」
力強く頷いたと同時に大粒の涙が流れてしまった。
「春からまた、俺たち一年生だな」
「う、うん……」
永瀬は実家の旅館の跡取りとして、私はその嫁として夢にも思わなかった未知の世界へ足を踏み入れることになる。仕事を辞めるって決めた時に覚悟は決めた。
「俺たち一年生」。その言葉に忘れていた、というより封印していた恥ずかしい過去の記憶が少しずつ蘇ってくる。あぁ、私……
「慣れないことばかりで大変かもしれない、辛い思いをすることもあるかもしれない。でも俺がいるからな、安心しろよ」
照れくささをごまかすかのように少しおどけた様子でそう言うけど、ちっとも笑えなくて、代わりに目頭がジンと熱くなる。
入社一年目。仕事はちっとも楽しくなくて苦痛で仕方がなかったけど、いつでも明るい永瀬の後ろにくっついていたおかげで人間関係はうまくやることができた。内気だった私をいつも強引に引こうとするから反発して喧嘩ばかりしていたけど、実はとても助けられていた。部署が異動になってからも、仕事に夢中になってがむしゃらに頑張ってこれたのは永瀬の存在があったからだということは転勤になって離れた時に嫌というほど思い知った。
何も、不安になることはないじゃない。私は永瀬さえ側にいてくれたらどんなことだって乗り越えられる。
「うん……!!」
力強く頷いたと同時に大粒の涙が流れてしまった。