孔雀石
私は9歳の時に両親を失ったショックで言葉を失った
心的ストレスから来る失声症
「おはよう、都紀」
おはよう、と呼び掛けられ振り向けば友人の村瀬葉月がそこに居た
私は話すことは出来ないので笑みを浮かべ手を振った
「数学の宿題した?私、寝ちゃって出来なかったんだー。」
どーしよー、と焦る葉月に苦笑を盛らしつつ制服のポケットから紙とペンを取り出し字を綴る
少しやって出来なかったら見せてあげるよ。
五時間目だから頑張って!
「なによ、それー!私が数学苦手なの知ってるでしょ!」
だからだよ。とまた紙に綴ればゲンナリと肩を落とす葉月に私は笑ってしまった
ソレが気に入らなかったのか葉月はプイッとあらぬ方を見て怒ったように口を尖らした
「都紀はいいよねー。頭良いし、可愛いし。私も都紀みたいになれればなぁ。」
何気ない葉月の一言だったがチクリと胸が痛んだ
「あ、遅刻しちゃう。急ごう、都紀!」
手を引かれ走りだした私達だったが今葉月の顔が見れない事に安心してしまった
今の自分はきっと痛い顔をしてるから