孔雀石
4時5分前
私は教室を出て応接室に向かう
応接室は職員室の隣にある
一階の南校舎
少し早いけど遅れるよりは良い
コンコン
軽く二回のノック
「はい、どうぞ。」
失礼します、と心の中で伝え礼をする
六月だというのに冷房の効いた風が流れてくる
「悪いな、柳谷。まあ、座れ。」
コクリと頷き担任と向かい合わせの席に座る
筆記の用意がしてあった
という事は少なくとも会話が必要な話なのだ
「きっと柳谷にとって良い話じゃない。それでも必要だと思うから先生は伝える。……大丈夫か?」
先生の表情は堅くて言葉どおり良くない事だろう
だけど先生はソレを承知の上で私に話してくれようとしている
私はそんな松井先生が好きだった
大丈夫です。と伝える
先生の優しさが染み渡る
「実は、この間の保護者会で柳谷の話題が出たんだ。
中三といっても、まだ中学生だし女の子だ。それなのに一人暮らしをしている事について保護者が異を唱えてな……。
別に家庭の事に茶茶を入れようなんて思ってない。
事情だってあるのは理解してる。
けど何か解決策として考えたいと思ってるんだ。」
一息で言い切った先生の顔は少し怒りを交え、揺れていた