無口な彼の、ヒミツと本心
残業中。
「お前さ、最近残業凄いだろ?」
「はぁ…」
「仕事、抱えすぎなんじゃないの?」
次長が芹沢くんの仕事を押し付けてきたくせに、申し訳ないと思ったのか私のデスクの山から書類を手に取り上げた
「いいですよ、それは。きちんと終わらせますから」
「芹沢さぁ」
少し不機嫌そうに芹沢くんの名前をつぶやくと、次長は薄っぺらい書類をクルッと丸めた
「芹沢くんは、あんなですけど仕事は出来ますよ」
「わかってるよ」
「きっとそれも、明日来れば朝5分くらいで終わらせますよ」
「あいつが明日来る保証なんてないだろ?」
「それは…」
芹沢くんは、早退だけじゃなく。
奥さんの調子が悪ければ、遅刻もするし、欠勤もする。
芹沢くんの生活は、奥さん中心に回ってる。
それでもクビにならないのは、異様なまでに仕事が出来ることと、その成果を社長が認めているから。
特例中の特例だ。
ただし、他の社員に示しがつかないため、芹沢くんには役職がつかない。
私ですら、主任の役職がついているのに。