恋愛ケータイ小説倶楽部
ーー放課後。


天気は母の言うとおり下り坂。


今の時点で雨は降っていないものの空は厚い雲で覆われ、灰色になっていた。


今日は掃除当番だった私はいつもより少し遅めに国語科準備室に訪れた。


この中に先生がいるかと思うと少し緊張して手が震えていたがそれを見て見ぬふりをしてノックをした。


そして、ドアを開けながら声を発する。


「失礼します」


……返事が返ってこない。


部屋の中に一歩ずつ足を踏み入れる。


するといつも座っているあたりのテーブルの奥に椅子を二つくっつけて、長い脚をブラブラさせながら目を閉じて横たわっている先生を発見した。


寝てる……のかな。


私は先生の近くに音を立てずにゆっくりと近寄ってみる。


すると、先生はスースーと鼻で呼吸しながら、規則正しく寝息を立てていた。


……寝てる。


テストの採点とかで疲れてるのかな?


そんなに疲れてるのに休まずこの部活を続けてくれているのは、先生の夢を私に託そうとしているから?


それとも私を少しは特別な生徒だと思ってくれている……?


こんな風に落ち着いて先生の顔を間近で見るのは初めてで。


あ、睫毛長いんだ。


それに鼻筋がとおった横顔。


寝顔……可愛い……


無防備に眠る先生は何だか子どもみたいに思えた。


これは私だけの特権。


なんだと思いたかったけど。


見知らぬ彼女もこの寝顔を見て、私と同じように思っているのかな……


そう思うと何だか胸の奥がモヤモヤしてきた。


< 111 / 217 >

この作品をシェア

pagetop