恋愛ケータイ小説倶楽部
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長谷川くんの好意に甘え、傘に入れてもらうことになった。
いつもの帰り道。
相合傘は思ったよりも二人の距離が近くて私の肩と背の高い長谷川の腕が触れそうで触れない。
そんな絶妙な距離感。
普段ならこういうシチュエーションだと自然とドキッとしてしまいそうなのに、何だか今日は心ここにあらずという感じで、何も感じなかった。
「…椎名?」
ふと我に返ると長谷川くんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「何かあった?」
「え?あ、何にもないよ。長谷川くんは……今日は部活……はさすがにないよね……どこかいたの?」
「うん、今日はちょっと図書室にいた」
「そうなんだ。テスト終わったばっかりなのに勉強?」
「それもあるけど、本も少し読みたいのがあって」
「長谷川くんも本好きなんだ?」
「そうだね。椎名も?」
「え?私?私はあんまり読まないよ。そんな風に見える?」
「だってさっき「長谷川くん"も"」って言ってたから」
その一言に足を止める。
「……椎名?」
「あ、ごめん。なんでもない……」
私、最低だ。
先生のことがやっぱり頭から離れない。