恋愛ケータイ小説倶楽部
コートでは次の試合の準備を進めようとしてた。


「そろそろ移動する?」


恵梨香の問いかけに「そうだね」と返答しようとしかけた、その時だった。


私の視界にある人の姿が飛び込んできて。


私は身動きが取れなくなった。


なんで、どうして。


こんな大勢の人がいるのに。


いつからか私の目は、まるで先生を探すレーダーがついているかのように先生を探し出すことができるようになってしまっている。


先生はうちのクラスの男子たちに声をかけて何か話をしているようだった。


どうしよう。忘れようと思ってるのに。


どうしてこんなに目で追ってしまうんだろう。


その時ふいに先生と視線がぶつかってしまった。


ーードキッ


それはほんの一瞬で先生はすぐに逸らしてしまったけれど。


それでもその一瞬は私の心を奪うのには十分な時間だった。


頑張って思い出さないようにしてたけど、やっぱりそんな努力は目があった瞬間、水の泡になった。


気持ちってそう簡単になくなるもんじゃない。


そう、思った。


今の自分は完全に自分の気持ちを見て見ぬふりをしているだけなんだって気づかされただけだった。


だって、こんなに頑張って忘れようとしてるのに。


先生の姿を見つけただけで。


目があっただけで。


こんなにも胸がギュッと締め付けられるように苦しいんだから。


好きになるのは一瞬なのに、


諦めるのはどうしてこんなにも難しいのだろう。



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