ホット・アイスクリーム
*
埃っぽい階段を、口を覆いながら上がり、若干錆びつつあるドアノブをひねる。そして、特に意味はないけれど叫ぶ。
「高宮~!」
給水タンクの陰に座って、ケータイを扱っていた高宮がゆっくりと立ち上がった。
日差しを浴びた瞬間、目を細めたのが大人っぽく見えた。
「声がバカでかい」
「ひどい」
不機嫌な顔の高宮に、「はい」とカップのアイスクリームを渡す。
念を押された通り、ストロベリー味だ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
素直だな、と感心したのも束の間。ビニール袋を覗きこみ、中の物を触った高宮の顔が一変した。
そして、私のことを軽く睨みながら言った。
「…溶けてるんですけど」
「夏だからね。暑いからね」
笑顔のまま言うと頬をつままれた。
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