朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
「さあ,できたよ。
 おまたせ~!」

陽和はそう言って,
朔と由宇をテーブルへ
誘った。

テーブルの上には,
おいしそうなスープと
ポテトサラダが
並んでいた。

「わ~!おいしそう!」

「わ!ホント!
 す…すげー!」

二人の喜びように
陽和は満面の笑みだった。

「ん?あれ?
 ハンバーグは?」

朔はテーブルの上を
確かめる。

「これよ~。
 そっとアルミを
 開けてみて!」

一人ずつ置いてある
お皿の上に載った
アルミの包みを
真ん中からそっと開けると

中にはさっき作った
ハンバーグが入っていた。

「わ~!
 いいにおい!」

「ホントだ!
 うまそー!

 よし,さっそく
 食べよう!」


一口食べると
肉汁がジワッとあふれて
何とも言えないおいしさが
口の中にあふれた。

「わ~。おいしいね!」

由宇はうれしそうに
陽和のほうを見る。

「ほんとだねえ。
 由宇ちゃんが上手に
 こねこねしたからだね。」

そういわれると
由宇はさらにうれしそうな
顔をしてハンバーグを頬張る。

「やー…陽和…
 …俺…まいったわ…。」

「朔ちゃん?」

「完全に胃袋も
 ホールディングだわ…。」

「…や…やだ…もう…。」

そういって照れて笑う
朔に…陽和は
暖かいものを感じていた。

「わー。このにんじんさん。
 ハートの形だ。」

「お,ほんとだ。」

さすが女の子。
そういうところは
ぬかりない。
朔は陽和のそんな
可愛らしさもほほえましく
思っていた。

「かわいいな。」

ふっと朔がつぶやいた
一言に陽和は頬を赤らめた。

「これは,ひよりせんせいの
 ハートなんだよね。」

「ん?」

朔は由宇の言葉に首を
傾げた。

「あのね,ハートってね,
 だれかのことだいすきな
 ときにつかうんだよ。」

「え…?」

由宇の率直な…でも
意外な一言に,
朔と陽和は固まった。

「だから,ひよりせんせいの
 だいすきのきもち
 なんだよね?」

「…え…?」

朔はびっくりして
由宇と陽和の方を
交互に見た。

陽和は顔を真っ赤に染めて
俯いた。

…そしてしばらくの
沈黙の後…
ちょっとだけ照れ笑いを
浮かべながらコクリと
頷いた。

「よかったね,さくちゃん。
 ひよりせんせい,
 さくちゃんのこと
 だいすきなんだって」

「…」

朔は驚いて…
また黙り込んで
しまったけれど…

しばらくして…
ボソッとつぶやいた。

「…俺も…。
 陽和のこと…
 …大好き」

「え…?も…
 や…やだ…朔ちゃん…」

食卓には,
なんだか照れくさくて
むずがゆいものの…
…やわらかくあたたかい
空気が纏っていた。



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