朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
後片付けを終えた後,
由宇が歯を磨きに行っている
間に,朔はこっそり陽和に話す。

「陽和…?
 あの…昨晩は…その…
 ホントに…ありがとう…」

「あ…こ…こちらこそ…」

「あの…体…大丈夫?」

朔は照れながらそう聞く。

「あ…うん…ちょっぴり…
 痛いけど…でも…大丈夫。

 朔ちゃんが…その…
 やさしく…してくれた…から」

「え……まあ…」

朔は,さらに照れた顔をする。

「なんか…朔ちゃんらしいなって
 …思った…」

「俺らしい?」

そう朔が聞くと,
陽和はにこっと笑う。

「うん。
 …いつも…私のこと…
 考えて…くれる…から」

「あ…いや…そんな…
 …違うよ,俺…ほら…
 『前科』があるし…」

「ふふ…」

「ただ…さ…
 …大切に…大切にしたいんだ
 …陽和のこと」

そう優しい声でいう朔に
陽和はまた…
心を奪われた。

「朔ちゃん…」

「だから…正直言うと…
 バランスとるのに…
 …必死…」

「バランス?」

「そう…陽和のことを大切に
 したい気持ちと…
 …その…陽和を好きすぎて
 湧きあがっちゃう感情と…」

「…そ…っか…」

陽和は少し顔を赤くして
朔をそっと見上げる。

「大丈夫…だよ…?
 私…あの…
 …朔ちゃんとなら…
 …きっと…」

すると,朔は驚いた顔をして
目をそらしながら,
陽和の頭をポンと撫でた。

「ば…ばか…」

そういいながら,顔を
真っ赤にしている朔は
少しだけ嬉しそうだった。



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