朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
水曜日,美咲からメールが
入った。

「今週はどう?」

毎月恒例の美咲とのデート。

「いいよ!」

陽和は,日曜日の夕方を
指定してきた美咲に,
OKの返事を返した。

今週末も…朔の家に…
泊まる予定。



「きんようびだけ?」

由宇にねだられて,結局
金曜日も土曜日も泊まる
ことになった。

「陽和の体が持つか,
 心配だなあ…」

そうこそっと耳元で
朔がつぶやく。

陽和は顔を赤くして
朔のほうを見る。

朔はクスッと笑って
買い物の続きをした。


週に1回の「食事会」は,
週に1回の「食事会」
プラス,週に1回の泊まりに
変更された。

それは,朔と由宇の強い
希望によって…だったけど,
陽和もそれがうれしかった。

今日は,平日だから,
簡単に,お好み焼きに
することにした。

由宇は本当に楽しそうに
キャベツやねぎを
かごに入れていく。

「なんか,由宇のほうが
 俺よりテンション高いな」

「ふふ」

「でも,一番喜んでるのは,
 間違いなく俺だから」

朔はそうつぶやくと
陽和の方を見てほほ笑む。

陽和は…強く強く
幸せを感じていた。



「よし,じゃあ,
 ひっくり返すぞ!
 せーの」

「わー!」
「あらら…」

朔が思いっきりひっくり返した
お好み焼きは,ぐちゃぐちゃ
になってしまった。

「あはは…」

陽和が慌てて形を整えて
なんとか食べられる状態に戻す。

「もう…さくちゃんへた~」

「えー…ごめん…
 でも,結構難しいんだよ?
 由宇,やってみろよ?」

「えー…ぼく…?」

そういって,困っている
由宇に,陽和は優しく
声をかける。

「大丈夫よ,コツ教えるから
 由宇ちゃんも,やってみよ?」

「…うん!」

由宇は陽和に教えられたとおりに,
ひっくり返すと,
上手くひっくり返すことが
できた。

「わー!!!
 やったあ!!」

由宇は満面の笑みで
陽和のほうを向く。

「すごーい!上手!
 由宇ちゃん!」

「すげー!やるなあ!」

「朔ちゃんより上手~!」

「だって,俺,陽和に
 コツ教えてもらって
 ないもん」

そういって拗ねた顔をする
朔を,由宇と陽和が笑った。




帰り道。

「やあ,今日も,
 楽しかったなあ」

「そうだねえ,
 お好み焼き,またしようね」

「ああ」

朔は嬉しそうな顔で
陽和を見つめる。

「ん?」

「いや…なんか…
 …その…陽和と一緒にいると
 由宇の表情が…
 ちがうんだよな…」

「違う?」

「ああ…なんか…
 安心して,楽しんでるって
 感じがするんだよ」

「…安…心?」

「ああ…
 なんか,上手く
 言えないけどさ。
 そんな…気がする」

「…朔ちゃん…」

陽和は,朔の手をぎゅっと
握りしめる。

「そう…だと…うれしい…な」

陽和はにこっと笑った。

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