朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
季節は,冬へ向かおうとしていた。
あれから,陽和は平日に数回と
週末のほとんどを
朔の家で過ごすように
なっていた。
朔の家は,徐々に陽和の
荷物が増えていった。
この間は,公ちゃんが
久々に遊びに来て,
苦笑していた。
「なんだよ,ひーちゃんと
同棲し始めたのか?」
「え…いや…」
そう,公ちゃんが聞きたく
なるのも無理はない。
台所には,朔が使いそうもない
いろいろな調理器具が並び,
食材もきれいに整理して
棚に並べられている。
洗面所にも,部屋の中にも
女性を感じずには
いられないような品が
多々並んでいたのだ。
今週末も,陽和は朔の家に
来る予定だった。
金曜日の夕方,
そろそろ勤務を終えようとする
陽和のもとに,朔から
メールが入った。
『ごめん,今日,
進路会議でどうしても
抜けられそうになくて。
夕飯,由宇と先に
食べててくれる?』
こんなことも,すでに数回あった。
最初は,朔も遠慮していたけれど,
陽和は,こんなときは,
お互い様だし,自分も
由宇と過ごすことを
楽しみにしているんだと説得し,
由宇と2人で,留守番をする
こともあった。
『うん,大丈夫だよ。
お仕事頑張って』
朔は,陽和のこのメールが
心底ありがたかった。
これまで,どうしても緊急の
ときには,田丸のおばさんを
頼ったりもしたが…
こんな風に,由宇を
快く預かってくれる人が
いることは,ありがたい。
何より,陽和がいると,
由宇が…心から嬉しそうに
安心した表情を見せるから,
朔は…陽和にありがたく
甘えようと思うことができた。
合鍵で部屋の鍵を開ける。
その音を聞きつけて,
由宇が嬉しそうに,玄関で
待っていた。
「あ,こんばんは」
「こんばんは!
ひよりせんせい,
おかえりなさい」
「あ…うん。ただいま」
今では,すっかり挨拶は
「おかえり」になっていた。
陽和は,まだちょっとだけ
照れくさい響きだなと思っている。
「ごめんね,今日は
朔ちゃん遅いんだって」
「ううん!ぼくはへいきだよ。
ひよりせんせいといるの
たのしいもん!」
そういって満面の笑みを浮かべる
由宇に,陽和は安堵する。
「さて,今日は何を
作りましょうか?」
そういいながら,冷蔵庫の中身を
二人で確認した。
結局,大した材料もなくて,
二人で買い物に出かけた。
おでんの具材を買って,
おでんをつくる。
ゆで卵の皮をむいたり,
こんにゃくを切ったり。
2人で料理を作っていると
由宇は本当に楽しそうだった。
夕ご飯が終わり,
由宇はお風呂も済ませて
それでも朔が帰って来るのを
待っていたが,
さすがに10時半を回ったところで,
ウトウトし始めた。
陽和は,ソファで眠り始めて
しまった由宇をそっと起こして,
ベッドへと向かわせた。
「由宇ちゃん,寝ようか」
由宇はコクリと頷き,
トイレに行った後,布団に入った。
陽和は,由宇との隣で,
由宇の頭を撫でながら
由宇を寝付かせた。
「ホント…かわいい。
なんか,よく似てるな。
子どものころの朔ちゃんに」
陽和は,由宇の寝顔を見ながら
そんな風につぶやいていた。
「由宇ちゃん,きっと
幼いながらに,一生懸命,
肩に力を入れて
頑張ってきたんだろうな。
もう少し…肩の力を
抜いてやることができたら
いいんだけどな…」
それでも,以前よりは,
そういう姿を見せるように
なってきた由宇に,
陽和は,もっともっと
甘えさせてやりたいという
思いを強く持っていた。
「私じゃ…まだまだ…
力不足なんだろうな…」
そんな風につぶやきながら
一緒にウトウトし始めていた。
あれから,陽和は平日に数回と
週末のほとんどを
朔の家で過ごすように
なっていた。
朔の家は,徐々に陽和の
荷物が増えていった。
この間は,公ちゃんが
久々に遊びに来て,
苦笑していた。
「なんだよ,ひーちゃんと
同棲し始めたのか?」
「え…いや…」
そう,公ちゃんが聞きたく
なるのも無理はない。
台所には,朔が使いそうもない
いろいろな調理器具が並び,
食材もきれいに整理して
棚に並べられている。
洗面所にも,部屋の中にも
女性を感じずには
いられないような品が
多々並んでいたのだ。
今週末も,陽和は朔の家に
来る予定だった。
金曜日の夕方,
そろそろ勤務を終えようとする
陽和のもとに,朔から
メールが入った。
『ごめん,今日,
進路会議でどうしても
抜けられそうになくて。
夕飯,由宇と先に
食べててくれる?』
こんなことも,すでに数回あった。
最初は,朔も遠慮していたけれど,
陽和は,こんなときは,
お互い様だし,自分も
由宇と過ごすことを
楽しみにしているんだと説得し,
由宇と2人で,留守番をする
こともあった。
『うん,大丈夫だよ。
お仕事頑張って』
朔は,陽和のこのメールが
心底ありがたかった。
これまで,どうしても緊急の
ときには,田丸のおばさんを
頼ったりもしたが…
こんな風に,由宇を
快く預かってくれる人が
いることは,ありがたい。
何より,陽和がいると,
由宇が…心から嬉しそうに
安心した表情を見せるから,
朔は…陽和にありがたく
甘えようと思うことができた。
合鍵で部屋の鍵を開ける。
その音を聞きつけて,
由宇が嬉しそうに,玄関で
待っていた。
「あ,こんばんは」
「こんばんは!
ひよりせんせい,
おかえりなさい」
「あ…うん。ただいま」
今では,すっかり挨拶は
「おかえり」になっていた。
陽和は,まだちょっとだけ
照れくさい響きだなと思っている。
「ごめんね,今日は
朔ちゃん遅いんだって」
「ううん!ぼくはへいきだよ。
ひよりせんせいといるの
たのしいもん!」
そういって満面の笑みを浮かべる
由宇に,陽和は安堵する。
「さて,今日は何を
作りましょうか?」
そういいながら,冷蔵庫の中身を
二人で確認した。
結局,大した材料もなくて,
二人で買い物に出かけた。
おでんの具材を買って,
おでんをつくる。
ゆで卵の皮をむいたり,
こんにゃくを切ったり。
2人で料理を作っていると
由宇は本当に楽しそうだった。
夕ご飯が終わり,
由宇はお風呂も済ませて
それでも朔が帰って来るのを
待っていたが,
さすがに10時半を回ったところで,
ウトウトし始めた。
陽和は,ソファで眠り始めて
しまった由宇をそっと起こして,
ベッドへと向かわせた。
「由宇ちゃん,寝ようか」
由宇はコクリと頷き,
トイレに行った後,布団に入った。
陽和は,由宇との隣で,
由宇の頭を撫でながら
由宇を寝付かせた。
「ホント…かわいい。
なんか,よく似てるな。
子どものころの朔ちゃんに」
陽和は,由宇の寝顔を見ながら
そんな風につぶやいていた。
「由宇ちゃん,きっと
幼いながらに,一生懸命,
肩に力を入れて
頑張ってきたんだろうな。
もう少し…肩の力を
抜いてやることができたら
いいんだけどな…」
それでも,以前よりは,
そういう姿を見せるように
なってきた由宇に,
陽和は,もっともっと
甘えさせてやりたいという
思いを強く持っていた。
「私じゃ…まだまだ…
力不足なんだろうな…」
そんな風につぶやきながら
一緒にウトウトし始めていた。