朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
さらに2時間ほど,
車を走らせた後,
高速道路を降りた。
辺りは,すっかり様子が
変わっていて,
山間の街に降りた。
そこから,さらに30分ほど
山の方へ車を走らせると
大きな湖に着いた。
「さあ,到着したぞ」
湖のほとりには,
小さなホテルとロッジが
数件。
そして,天文観測所
らしき建物があった。
「ここ?」
「ああ,こっちのロッジ。
ちょっと待ってて」
朔は,ホテルの中に入って,
従業員に話をし,
鍵を借りて来た。
「さあ,入ろう」
朔がカギを開けて入ると,
ロッジの中は木の香りがした。
「わあ,すてき」
陽和が好みそうな,
木を基調にした可愛らしい作り。
由宇は,ロフトのハンモックと
天文観測用の大きな天窓に
感激していた。
「よし,じゃあ,一服したら
ちょっと散歩に行こう」
「うん!」
荷物を下ろし終えた3人は,
湖の周りを散歩した。
「きれいなところだね」
「ああ,そうだろ。
でもさ,夜の方がもっと
すごいぜ」
「うん,たのしみ!」
朔は,由宇を肩車した。
「由宇,思いっきり
空気,吸い込んでみ?」
「うん!」
由宇は大きく深呼吸をした。
「空気がおいしいだろ?」
「うん!」
陽和も真似して深呼吸する。
「ホントだあ!
気持ちいい!」
朔は陽和に囁く。
「…ふ…かわい…」
朔の下がった眉毛に
陽和は,くしゃっとした
笑顔を返す。
ホテルに入って,
昼ご飯を頂く。
レストランは,ガラス張りで
湖の様子がよく見えた。
「わあ,素敵!」
陽和と朔は,
外の様子を見ながら
食事を楽しんでいた。
「由宇ちゃん,
カルガモがいるね」
「ほんとだあ」
「あ,あの人,釣りしてる」
「ほんとだあ」
「おお,明日,
釣りしようぜ。
道具持ってきたし」
「やったあ!」
のんびりすごした3人は,
ロッジに帰った。
夜の天体観測にそなえて,
少し仮眠をとった3人は,
夕方過ぎに目を覚ました。
「さて,そろそろ行きますか」
朔はそういうと,3人で
天文台へと向かった。
天文台に入ると,
宇宙のさまざまなことが
展示してあった。
由宇は興味津々に
一つ一つを見ていく。
「ホントに,由宇ちゃん,
宇宙が好きなのね」
「ああ…ホント。
5歳児にして,この
感性はすごいよな」
望遠スペースに来ると,
すでに外は星がいっぱい
輝いていた。
「わーすごい!!」
「本当!星が…
こんなにたくさん!!」
「僕,この望遠鏡,
覗いてみてごらん」
天文台の職員らしき人が,
由宇に話しかける。
由宇は嬉しそうに
望遠鏡をのぞきながら
職員の人の話を
聞いていた。
「朔ちゃん,よく
こんな星がたくさん
見えるところ
知ってたね」
「ああ,ここの隣のホテルにさ,
高校生のころ,
サッカーの合宿で来たんだ」
「ああ,そうだったの」
「そうそう,それで,
家に帰ってさ,
兄貴に話をしたら,
兄貴は兄貴で,
大学の天文学部の合宿で,
来たことあったらしくて」
「へえ」
「義姉さんもさ,天文学部で
一緒に来ていたらしくて」
「そうなんだ」
「まだその頃は,
結婚前だったけどさ,
どうやら二人の
思い出の場所らしくて。
なんか,話が盛り上がって
たな」
朔は楽しそうにその話を
するけれど…
どこか愁いを帯びていた。
お兄さんのこと…
思い出したのかな…。
陽和は,朔の兄の航のことは
かすかな記憶があるだけだった。
だけど,朔とよく似ていて,
なんなら朔を
さらに柔らかくしたような
雰囲気だったように記憶している。
「でさ,その後,
どうやら,ここで
兄貴,義姉さんにプロポーズ
したみたいだ」
「え…そ…そうなんだ…」
陽和は,意識してはいけないと
思いながらも
少しだけ顔が赤くなるのを
ぐっとこらえようとしていた。
プロポーズ…
朔は,陽和の方をちらっと
見て,その表情に少しだけ
期待を込めた。
もしかしたら陽和も
意識して…くれてるのか?
「でさ,由宇も確か,
赤ちゃんのころ,ここへ
来たことがあったはず」
「ええっ! そうなんだ」
「ああ,兄さん,
ホントに,星が…
好きだったからな…」
「…そっか」
陽和は朔の少し寂しそうな
顔を見て,
横にぴったり寄り添った。
「私たちにとっても…
思い出の場所になるね…」
「ああ…
一生忘れない,
思い出の場所になるさ」
陽和は,ドキリとした。
それは…
初めて3人で旅行した…
場所だって…こどだよね?
朔はそんな陽和の動揺を
知ってか知らずか…
陽和の肩を抱き寄せていた。
「さくちゃん,ひーちゃん!
すごいよ!見てみて!」
由宇が,望遠鏡のところで
二人を呼んだ。
二人は目を見合わせて
クスッと笑った後,
由宇のところへ駆け寄った。
「ふゆの
だいさんかくがみえるよ」
「へえ!」
「じゃあ,あれが
北斗七星だな」
「うんうん」
3人は,代わる代わる
望遠鏡をのぞきながら
星空を眺めた。
天文台が閉まる時間になって
3人は,また,
ロッジへの道を歩いた。
「寒い…けど…
きれい…」
陽和は広がる星空に
見とれていた。
「ホントだなあ」
由宇を肩車しながら
朔も上を見上げる。
「あ…陽和…
悪いんだけどさ…
先にロッジに
入っててくれる?」
朔のその言い方を聞いて,,
陽和は気遣って
そっと頷いた。
車を走らせた後,
高速道路を降りた。
辺りは,すっかり様子が
変わっていて,
山間の街に降りた。
そこから,さらに30分ほど
山の方へ車を走らせると
大きな湖に着いた。
「さあ,到着したぞ」
湖のほとりには,
小さなホテルとロッジが
数件。
そして,天文観測所
らしき建物があった。
「ここ?」
「ああ,こっちのロッジ。
ちょっと待ってて」
朔は,ホテルの中に入って,
従業員に話をし,
鍵を借りて来た。
「さあ,入ろう」
朔がカギを開けて入ると,
ロッジの中は木の香りがした。
「わあ,すてき」
陽和が好みそうな,
木を基調にした可愛らしい作り。
由宇は,ロフトのハンモックと
天文観測用の大きな天窓に
感激していた。
「よし,じゃあ,一服したら
ちょっと散歩に行こう」
「うん!」
荷物を下ろし終えた3人は,
湖の周りを散歩した。
「きれいなところだね」
「ああ,そうだろ。
でもさ,夜の方がもっと
すごいぜ」
「うん,たのしみ!」
朔は,由宇を肩車した。
「由宇,思いっきり
空気,吸い込んでみ?」
「うん!」
由宇は大きく深呼吸をした。
「空気がおいしいだろ?」
「うん!」
陽和も真似して深呼吸する。
「ホントだあ!
気持ちいい!」
朔は陽和に囁く。
「…ふ…かわい…」
朔の下がった眉毛に
陽和は,くしゃっとした
笑顔を返す。
ホテルに入って,
昼ご飯を頂く。
レストランは,ガラス張りで
湖の様子がよく見えた。
「わあ,素敵!」
陽和と朔は,
外の様子を見ながら
食事を楽しんでいた。
「由宇ちゃん,
カルガモがいるね」
「ほんとだあ」
「あ,あの人,釣りしてる」
「ほんとだあ」
「おお,明日,
釣りしようぜ。
道具持ってきたし」
「やったあ!」
のんびりすごした3人は,
ロッジに帰った。
夜の天体観測にそなえて,
少し仮眠をとった3人は,
夕方過ぎに目を覚ました。
「さて,そろそろ行きますか」
朔はそういうと,3人で
天文台へと向かった。
天文台に入ると,
宇宙のさまざまなことが
展示してあった。
由宇は興味津々に
一つ一つを見ていく。
「ホントに,由宇ちゃん,
宇宙が好きなのね」
「ああ…ホント。
5歳児にして,この
感性はすごいよな」
望遠スペースに来ると,
すでに外は星がいっぱい
輝いていた。
「わーすごい!!」
「本当!星が…
こんなにたくさん!!」
「僕,この望遠鏡,
覗いてみてごらん」
天文台の職員らしき人が,
由宇に話しかける。
由宇は嬉しそうに
望遠鏡をのぞきながら
職員の人の話を
聞いていた。
「朔ちゃん,よく
こんな星がたくさん
見えるところ
知ってたね」
「ああ,ここの隣のホテルにさ,
高校生のころ,
サッカーの合宿で来たんだ」
「ああ,そうだったの」
「そうそう,それで,
家に帰ってさ,
兄貴に話をしたら,
兄貴は兄貴で,
大学の天文学部の合宿で,
来たことあったらしくて」
「へえ」
「義姉さんもさ,天文学部で
一緒に来ていたらしくて」
「そうなんだ」
「まだその頃は,
結婚前だったけどさ,
どうやら二人の
思い出の場所らしくて。
なんか,話が盛り上がって
たな」
朔は楽しそうにその話を
するけれど…
どこか愁いを帯びていた。
お兄さんのこと…
思い出したのかな…。
陽和は,朔の兄の航のことは
かすかな記憶があるだけだった。
だけど,朔とよく似ていて,
なんなら朔を
さらに柔らかくしたような
雰囲気だったように記憶している。
「でさ,その後,
どうやら,ここで
兄貴,義姉さんにプロポーズ
したみたいだ」
「え…そ…そうなんだ…」
陽和は,意識してはいけないと
思いながらも
少しだけ顔が赤くなるのを
ぐっとこらえようとしていた。
プロポーズ…
朔は,陽和の方をちらっと
見て,その表情に少しだけ
期待を込めた。
もしかしたら陽和も
意識して…くれてるのか?
「でさ,由宇も確か,
赤ちゃんのころ,ここへ
来たことがあったはず」
「ええっ! そうなんだ」
「ああ,兄さん,
ホントに,星が…
好きだったからな…」
「…そっか」
陽和は朔の少し寂しそうな
顔を見て,
横にぴったり寄り添った。
「私たちにとっても…
思い出の場所になるね…」
「ああ…
一生忘れない,
思い出の場所になるさ」
陽和は,ドキリとした。
それは…
初めて3人で旅行した…
場所だって…こどだよね?
朔はそんな陽和の動揺を
知ってか知らずか…
陽和の肩を抱き寄せていた。
「さくちゃん,ひーちゃん!
すごいよ!見てみて!」
由宇が,望遠鏡のところで
二人を呼んだ。
二人は目を見合わせて
クスッと笑った後,
由宇のところへ駆け寄った。
「ふゆの
だいさんかくがみえるよ」
「へえ!」
「じゃあ,あれが
北斗七星だな」
「うんうん」
3人は,代わる代わる
望遠鏡をのぞきながら
星空を眺めた。
天文台が閉まる時間になって
3人は,また,
ロッジへの道を歩いた。
「寒い…けど…
きれい…」
陽和は広がる星空に
見とれていた。
「ホントだなあ」
由宇を肩車しながら
朔も上を見上げる。
「あ…陽和…
悪いんだけどさ…
先にロッジに
入っててくれる?」
朔のその言い方を聞いて,,
陽和は気遣って
そっと頷いた。