朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
3月。
今日は…由宇の卒園式。
朔は,保護者として,
陽和は,職員として
由宇の門出を祝っていた。
卒園生の呼びかけ。
由宇は代表だった。
「かぞくのみなさん。
ぼくたちは,
1ねんせいになります」
その言葉を聞き,
目頭を押さえる朔を
遠くから見て,
陽和は微笑ましく思っていた。
卒園式の後,
由宇の周りには,
写真を一緒に撮りたい
友だちがたくさん並んでいた。
「由宇…モテるんだな…」
「あはは,そうね。
由宇ちゃんは,
男女問わず,人気者だもん」
「そっか…」
「昔の朔ちゃんそっくりだね」
「え…そうか,
俺はあんなに…」
そこに泣きながら
やってきた小さい女の子。
「あ,たんぽぽ組の
麗美ちゃんだ」
麗美ちゃんは,
由宇にそっとチューリップを
手渡した。
「ありがとう」
由宇がゆっくり笑うと
麗美ちゃんは走って
逃げてしまった。
「なかなか…罪な
男だな…由宇」
「あはは,やっぱり
朔ちゃんに似たのかな?」
「ええ…そうかあ…?」
「由宇?
行こうか?」
人の波が消えて,
みんなが園庭を出た後も,
朔と由宇は,陽和を
待っていた。
年中組の担任である陽和は,
卒園式の後,
有休をもらっていた。
これから3人で向かうのは…
「さて,由宇,これから
向かうのは,どこでしょう?」
「え?どこ?
お昼ご飯?」
「それも行くけど,その前に」
陽和は,クスッと笑った。
「その前に…ね…」
「そのまえに?」
「これから,市役所に行くよ」
「しやくしょ?」
由宇は,よくわからないという
顔をした。
「簡単にいうと…
陽和も由宇も俺も…
みんな,『高比良さん』に
なります」
「みんな?」
「ああ。
陽和が俺の奥さんに
なるってこと。
俺たちが,本物の
家族になるってこと」
そう,朔が言うと,
由宇は,また大喜びだった。
実は,二人が決断したのは,
自分たちの入籍だけではなかった。
由宇との養子縁組も…
同時に行った。
だけど由宇にはそれは
大人になるまで伝えない
つもりだ。
だって,由宇にとっては,
やっぱり航と兄嫁が
本当の父と母だから。
朔は,そう思っていた。
自分と陽和は,由宇の
父と母ではない。
…でも…3人は
…間違いなく,家族だ。
朔と陽和は心に
そう強く思った。
今日は…由宇の卒園式。
朔は,保護者として,
陽和は,職員として
由宇の門出を祝っていた。
卒園生の呼びかけ。
由宇は代表だった。
「かぞくのみなさん。
ぼくたちは,
1ねんせいになります」
その言葉を聞き,
目頭を押さえる朔を
遠くから見て,
陽和は微笑ましく思っていた。
卒園式の後,
由宇の周りには,
写真を一緒に撮りたい
友だちがたくさん並んでいた。
「由宇…モテるんだな…」
「あはは,そうね。
由宇ちゃんは,
男女問わず,人気者だもん」
「そっか…」
「昔の朔ちゃんそっくりだね」
「え…そうか,
俺はあんなに…」
そこに泣きながら
やってきた小さい女の子。
「あ,たんぽぽ組の
麗美ちゃんだ」
麗美ちゃんは,
由宇にそっとチューリップを
手渡した。
「ありがとう」
由宇がゆっくり笑うと
麗美ちゃんは走って
逃げてしまった。
「なかなか…罪な
男だな…由宇」
「あはは,やっぱり
朔ちゃんに似たのかな?」
「ええ…そうかあ…?」
「由宇?
行こうか?」
人の波が消えて,
みんなが園庭を出た後も,
朔と由宇は,陽和を
待っていた。
年中組の担任である陽和は,
卒園式の後,
有休をもらっていた。
これから3人で向かうのは…
「さて,由宇,これから
向かうのは,どこでしょう?」
「え?どこ?
お昼ご飯?」
「それも行くけど,その前に」
陽和は,クスッと笑った。
「その前に…ね…」
「そのまえに?」
「これから,市役所に行くよ」
「しやくしょ?」
由宇は,よくわからないという
顔をした。
「簡単にいうと…
陽和も由宇も俺も…
みんな,『高比良さん』に
なります」
「みんな?」
「ああ。
陽和が俺の奥さんに
なるってこと。
俺たちが,本物の
家族になるってこと」
そう,朔が言うと,
由宇は,また大喜びだった。
実は,二人が決断したのは,
自分たちの入籍だけではなかった。
由宇との養子縁組も…
同時に行った。
だけど由宇にはそれは
大人になるまで伝えない
つもりだ。
だって,由宇にとっては,
やっぱり航と兄嫁が
本当の父と母だから。
朔は,そう思っていた。
自分と陽和は,由宇の
父と母ではない。
…でも…3人は
…間違いなく,家族だ。
朔と陽和は心に
そう強く思った。