朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
ある夏の日。

「俺,はじめて陽和に
 消しゴムを貸してもらった頃,
 将来の夢,2つ見つけたんだ」

「2つ?」

「一つは,先生になること。
 もう一つは…」

「もう一つは?」

「陽和を奥さんにすること」

「え…」

「両方叶うなんて
 俺…幸せ者だと思わない?」

「…違うよ,朔ちゃん」

「え?」

「幸せ者じゃなくて,
 それは,朔ちゃんが
 頑張ったからだよ」

「頑張った?」

「うん。
 先生になるために
 頑張って勉強したし…
 私と…もう一度
 恋をしてくれたでしょ?」

「…陽和…」

「それに,私も同じ」

「同じ?」

「保育士になる夢もかなえたし…
 朔ちゃんの奥さんになる夢も
 かなったもの」

「そっか…」

「そして,もう一つ
 夢がかなった」

「もう一つ?」

「朔ちゃんと,由宇ちゃんと
 素敵な家族に囲まれて…
 生きていくこと」

「ああ…」

朔は陽和を後ろから
抱きしめる。

「俺も,3人で家族になれて
 本当に幸せ」

「…うん…だけどね…
 朔ちゃん…
 もうすぐ,
 3人じゃなくなりそうだよ…」

「え…?」

朔は驚いた顔をした。

「本当!!?」

朔の嬉しそうな声に
陽和はコクリと頷いて
朔の手をギュッと握りしめた。



「ねえ,さくちゃん。
 あさがおがさきそうだよ」

「おお,そっか。
 やっと観察日記が
 書けるな…」

そう言ってベランダに出ると
朔は由宇に耳打ちした。

「なあ,由宇?」

「なに?」

「もうすぐさ…
 家族が…増えるかも
 しれない…んだけど…」

「え?ええっ?」

そういうと由宇は
朔の手を引っ張って
陽和のところに駆けよって,
陽和に抱き付いた。

~END~

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