朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
陽和はどうにもならない
感情を抱えながら
教室を片付けていた。
「陽和先生,高比良さんと
話しできました?」
「あ・・ううん・・
ちょうど・・・
忙しい時間だったから。
あ・・・見かけたん・・・
だけどねえ・・。」
「そっかあ。
じゃあ,今度来たら,
私変わりますから,
話してきてくださいよ。」
「え・・・
い・・いや。
いいよ・・・そんな。
わざわざ・・
そこまでしなくても。」
陽和はそう言って
自分へも美和子へも
自分の本心を取り繕った。
本当は朔と言葉を
交わしてみたい・・・。
だけど・・
そうすることによって,
自分の気持ちが
取り返しのつかないところまで
いってしまいそうで・・・
家族がいる人に・・
そんな気持ちを抱くなんて
自分は本当に
最低の人間だ・・と
自分を責めていた。
陽和は重い重い胸の
苦しみを抱えながら
帰路に着いた。
「はあ・・
いつまで私は・・・
ふっきれずに・・・
過ごすことになるんだろう。」
でも・・もしかしたら
話をしてみて・・・
現状,幸せそうな朔の
言葉を聞いたら,
すっきりと
あきらめがつくのかもしれない。
陽和はそうも
思い始めていた。
園の門を抜けて
少し歩き,駅前に出た。
今日の夕飯は何にしようかな。
陽和はそう思いながら駅前の
お店を眺めていた。
「あれ?
もしかして,陽和ちゃん?」
・・・そこに立っていたのは,
中村先生だった。
「あ・・あれ?
中村先生ですか?
きゃあ!久しぶりです!」
陽和は中村先生の手を
握りしめて飛び跳ねた。
「どうしたの?こんなところで?」
「先生こそ!」
中村先生は
陽和が小学校のときに
いたのはもちろんだが,
県立学校へと
異動した中村先生は,
陽和が通っていた高校の
養護教諭でもあった。
それからも交流は続いていて,
陽和が保育士になった時にも
先生に会いに行っていた。
「私ねえ,4年前から
百戸高校に勤めてるのよ。」
「ええ!そ,そうなんですか?
実は私・・・
4月から百戸保育園に
勤めてるんです。」
「ええっ!!
そうだったの!
まあ,そうだったのね。」
二人で手を握りながら
キャアキャアとはしゃぐ。
そしてふと
中村先生の鋭い勘があることに
気付いた。
「あーっ!!!」
中村先生が大きな声を
上げたので陽和は
驚いた。
「え?な・・何ですか?」
「あ・・・えっと・・
いや・・・こっちの話。」
中村先生は事情はすっかり
わかってしまったものの,
まだ朔から確認をとって
いないことを考え,
陽和に朔のことを
伝えるのは遠慮した。
「え・・先生,百戸高校・・
に・・・勤めて
るんですよね・・・?」
「・・・ええ。
何か気になることでもある?」
陽和の反応に,
おそらく陽和も朔のことに
気が付いていることを確信した
中村先生は,それとなく
勘ぐってみる。
「え・・いえ・・。
あ・・あの,
近くですもんね。
また先生,ゆっくり
お茶でもしましょうよ。」
「そうねえ!
保健室に遊びに来てくれても
いいんだけど。」
「え・・あ・・
あ・・でも・・・
さすがにそれは・・・
あの・・ほら・・・
高校って・・・
敷居高いですよ・・・。」
そういってごまかそうとする
陽和に,中村先生は
数日間の朔の様子を
重ねて,可笑しくなった。
・・・似た者同士
二人・・だわ・・・。
電車の時間が迫った
陽和は,中村先生に
手を振って,改札へと
消えていった。
中村先生は
幸せな気持ちでいっぱいだった。
そうか・・・
朔ちゃんの再会は・・・
陽和ちゃんだったか・・・
朔の片思いの相手が陽和という
ことは,とても納得ができた。
陽和の柔らかい雰囲気は
朔にぴったりだと思ったし,
何より,小学校のとき,
朔が陽和に恋焦がれていたことも
中村先生はよく知っていた。
・・・それにしても
それから先,恋愛を
していないって・・・
朔ちゃんは言っていたけど・・・?
その部分を考えると
半信半疑だった・・・
だってそれって・・・
小学校の時以来・・
恋愛をしていないってこと・・・?
いくら恋愛経験がないといっても
まさかそこまで・・?
朔の風貌を考えたら
・・・もし・・本当に
相手が陽和なんであれば・・・
朔の強い思いに感動する反面,
少し呆れる・・・。
どれだけ不器用で一途なんだか・・
わが「息子」・・・。
まあ・・・いいわ。
とにかく,明日。
朔を問い詰めよう!
中村先生はそう
強く決心していた。
感情を抱えながら
教室を片付けていた。
「陽和先生,高比良さんと
話しできました?」
「あ・・ううん・・
ちょうど・・・
忙しい時間だったから。
あ・・・見かけたん・・・
だけどねえ・・。」
「そっかあ。
じゃあ,今度来たら,
私変わりますから,
話してきてくださいよ。」
「え・・・
い・・いや。
いいよ・・・そんな。
わざわざ・・
そこまでしなくても。」
陽和はそう言って
自分へも美和子へも
自分の本心を取り繕った。
本当は朔と言葉を
交わしてみたい・・・。
だけど・・
そうすることによって,
自分の気持ちが
取り返しのつかないところまで
いってしまいそうで・・・
家族がいる人に・・
そんな気持ちを抱くなんて
自分は本当に
最低の人間だ・・と
自分を責めていた。
陽和は重い重い胸の
苦しみを抱えながら
帰路に着いた。
「はあ・・
いつまで私は・・・
ふっきれずに・・・
過ごすことになるんだろう。」
でも・・もしかしたら
話をしてみて・・・
現状,幸せそうな朔の
言葉を聞いたら,
すっきりと
あきらめがつくのかもしれない。
陽和はそうも
思い始めていた。
園の門を抜けて
少し歩き,駅前に出た。
今日の夕飯は何にしようかな。
陽和はそう思いながら駅前の
お店を眺めていた。
「あれ?
もしかして,陽和ちゃん?」
・・・そこに立っていたのは,
中村先生だった。
「あ・・あれ?
中村先生ですか?
きゃあ!久しぶりです!」
陽和は中村先生の手を
握りしめて飛び跳ねた。
「どうしたの?こんなところで?」
「先生こそ!」
中村先生は
陽和が小学校のときに
いたのはもちろんだが,
県立学校へと
異動した中村先生は,
陽和が通っていた高校の
養護教諭でもあった。
それからも交流は続いていて,
陽和が保育士になった時にも
先生に会いに行っていた。
「私ねえ,4年前から
百戸高校に勤めてるのよ。」
「ええ!そ,そうなんですか?
実は私・・・
4月から百戸保育園に
勤めてるんです。」
「ええっ!!
そうだったの!
まあ,そうだったのね。」
二人で手を握りながら
キャアキャアとはしゃぐ。
そしてふと
中村先生の鋭い勘があることに
気付いた。
「あーっ!!!」
中村先生が大きな声を
上げたので陽和は
驚いた。
「え?な・・何ですか?」
「あ・・・えっと・・
いや・・・こっちの話。」
中村先生は事情はすっかり
わかってしまったものの,
まだ朔から確認をとって
いないことを考え,
陽和に朔のことを
伝えるのは遠慮した。
「え・・先生,百戸高校・・
に・・・勤めて
るんですよね・・・?」
「・・・ええ。
何か気になることでもある?」
陽和の反応に,
おそらく陽和も朔のことに
気が付いていることを確信した
中村先生は,それとなく
勘ぐってみる。
「え・・いえ・・。
あ・・あの,
近くですもんね。
また先生,ゆっくり
お茶でもしましょうよ。」
「そうねえ!
保健室に遊びに来てくれても
いいんだけど。」
「え・・あ・・
あ・・でも・・・
さすがにそれは・・・
あの・・ほら・・・
高校って・・・
敷居高いですよ・・・。」
そういってごまかそうとする
陽和に,中村先生は
数日間の朔の様子を
重ねて,可笑しくなった。
・・・似た者同士
二人・・だわ・・・。
電車の時間が迫った
陽和は,中村先生に
手を振って,改札へと
消えていった。
中村先生は
幸せな気持ちでいっぱいだった。
そうか・・・
朔ちゃんの再会は・・・
陽和ちゃんだったか・・・
朔の片思いの相手が陽和という
ことは,とても納得ができた。
陽和の柔らかい雰囲気は
朔にぴったりだと思ったし,
何より,小学校のとき,
朔が陽和に恋焦がれていたことも
中村先生はよく知っていた。
・・・それにしても
それから先,恋愛を
していないって・・・
朔ちゃんは言っていたけど・・・?
その部分を考えると
半信半疑だった・・・
だってそれって・・・
小学校の時以来・・
恋愛をしていないってこと・・・?
いくら恋愛経験がないといっても
まさかそこまで・・?
朔の風貌を考えたら
・・・もし・・本当に
相手が陽和なんであれば・・・
朔の強い思いに感動する反面,
少し呆れる・・・。
どれだけ不器用で一途なんだか・・
わが「息子」・・・。
まあ・・・いいわ。
とにかく,明日。
朔を問い詰めよう!
中村先生はそう
強く決心していた。