朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
幸い,陽和の祖母のケガは,
素早く手術をしたおかげで
金属を入れることには
なったものの・・・
2週間後には,歩くリハビリも
はじめて・・
ひと月経つころには,
自力歩行ができるほどまで
回復した。
回復しないのは・・・
朔の気持ちだった。
あれから・・
朝・・・すみれ組を
覗くことすら・・
朔はできなくなって
しまっていた。
陽和のことを
思い出すと・・・
情けないけれど・・・
涙が出る・・・。
長い長い時間をかけて
結局また・・
失恋してしまった自分が
情けなかった。
どうして・・
前に向いて進めないんだろう。
いいじゃないか,
陽和は幸せなんだから。
自分も・・・
陽和のことをふっきって
次に・・・進まなくては・・。
そう思えば思うほど
心にぽっかり穴が開いたように
空虚な気持ちになる。
結局自分を支えていたのは
今も昔も・・・
陽和だったのか・・・。
「ねえ,朔ちゃん?
どうだった?」
あけた月曜日に
中村先生に問いかけられた時には・・
「陽和・・・
恋人がいました。」
そうつぶやくのが
精一杯で・・・
それ以上話すと
朔は涙をこぼしてしまいそうだった。
1か月たっても
その状況は変わらなかった。
「ねえ,朔ちゃん,
結局どうだったの?」
中村先生はしびれを切らせて
朔に問いかけた。
あれから,朔は
保健室に来ることもなく
何の報告もしていなかった。
「いや・・・
だから・・・。」
朔は暗い表情で
中村先生に作り笑いを向けた。
「恋人がいたんです。
陽和。」
「そう・・・。」
中村先生はそう言ったものの
再会した時の陽和からは
そういうことが
感じられなかったから
まだ信じられなかった。
「陽和ちゃんに,
そう言われたの?」
「あ・・・いや・・・
見ちゃったんですよ・・・
車で園に迎えに来てるの。」
「え・・園に?」
「ええ・・。」
中村先生は不思議に思った。
陽和ちゃんって
そういうタイプだろうか。
まあ,何か事情があったの
かもしれないが・・・。
「それって絶対に
恋人だった?
兄弟とかじゃないの?」
「いや・・
陽和は一人っ子のはずです。」
「うーん・・・そう・・?」
「ええ。」
「でも,手をつないだり
・・してたわけじゃ
ないんでしょ?」
「・・・まあ・・。」
「じゃあ,わからないじゃない。」
「・・・でも・・・。」
そういってぐずぐず
言っている朔に
中村先生は呆れていた。
「ちゃんと自分の目と
耳で・・
本人に確かめるべきよ。
それでひいちゃうほどの
思いなの?
朔ちゃんの気持ちは・・?」
朔ははっとしていた。
・・・ううん・・・
俺は・・・
陽和のことが・・・
好き・・・だ・・・。
目の前で・・・
その光景を見ても・・・
あきらめきれないくらいに・・。
「・・・・そう・・・か・・
そうです・・ね。
やっぱりちゃんと・・・
陽和と・・話を
しないと・・・
いけませんよね。」
「そうよ。うん。」
朔は中村先生の方を
強いまなざしでみつめ
また・・・決意した。
やっぱり・・・
ちゃんと・・・・・
陽和の口から・・・
聞かなくちゃ・・・。
陽和はといえば・・・
最初に目が合ってから
1週間の間は,
言葉を交わしたり,
朔がすみれ組をのぞいたり
してくれて・・・
陽和は
「もしかしたら・・」
という思いが
なかったわけじゃない。
だけど・・・
あれ以来,朔が
陽和の前に顔を出すことは
なくなった。
「まあ・・・
当然・・だよね。」
陽和は朔のことを
既婚者だと思い込んで
いる。
だから・・・
これも当然の結果。
朔の目が覚めたという
ことだろうと
勝手に納得していた。
それでも・・・
少しずつ動き始めていた
恋愛時計の秒針を
急に止めるのは・・・
難しく・・・
陽和の心は
ギシギシと軋んでいた。
もう少し・・・
早く・・・
朔と再会していれば・・・
でも・・そう思うってことは
やっぱり私・・・
朔ちゃんのこと・・・
今になってその思いを
自覚するなんて・・・
苦しい気持ちを
ぎゅっと押しこらえれば
押しこらえるほど・・・
朔の顔が浮かんできて
涙があふれてくる・・・。
素早く手術をしたおかげで
金属を入れることには
なったものの・・・
2週間後には,歩くリハビリも
はじめて・・
ひと月経つころには,
自力歩行ができるほどまで
回復した。
回復しないのは・・・
朔の気持ちだった。
あれから・・
朝・・・すみれ組を
覗くことすら・・
朔はできなくなって
しまっていた。
陽和のことを
思い出すと・・・
情けないけれど・・・
涙が出る・・・。
長い長い時間をかけて
結局また・・
失恋してしまった自分が
情けなかった。
どうして・・
前に向いて進めないんだろう。
いいじゃないか,
陽和は幸せなんだから。
自分も・・・
陽和のことをふっきって
次に・・・進まなくては・・。
そう思えば思うほど
心にぽっかり穴が開いたように
空虚な気持ちになる。
結局自分を支えていたのは
今も昔も・・・
陽和だったのか・・・。
「ねえ,朔ちゃん?
どうだった?」
あけた月曜日に
中村先生に問いかけられた時には・・
「陽和・・・
恋人がいました。」
そうつぶやくのが
精一杯で・・・
それ以上話すと
朔は涙をこぼしてしまいそうだった。
1か月たっても
その状況は変わらなかった。
「ねえ,朔ちゃん,
結局どうだったの?」
中村先生はしびれを切らせて
朔に問いかけた。
あれから,朔は
保健室に来ることもなく
何の報告もしていなかった。
「いや・・・
だから・・・。」
朔は暗い表情で
中村先生に作り笑いを向けた。
「恋人がいたんです。
陽和。」
「そう・・・。」
中村先生はそう言ったものの
再会した時の陽和からは
そういうことが
感じられなかったから
まだ信じられなかった。
「陽和ちゃんに,
そう言われたの?」
「あ・・・いや・・・
見ちゃったんですよ・・・
車で園に迎えに来てるの。」
「え・・園に?」
「ええ・・。」
中村先生は不思議に思った。
陽和ちゃんって
そういうタイプだろうか。
まあ,何か事情があったの
かもしれないが・・・。
「それって絶対に
恋人だった?
兄弟とかじゃないの?」
「いや・・
陽和は一人っ子のはずです。」
「うーん・・・そう・・?」
「ええ。」
「でも,手をつないだり
・・してたわけじゃ
ないんでしょ?」
「・・・まあ・・。」
「じゃあ,わからないじゃない。」
「・・・でも・・・。」
そういってぐずぐず
言っている朔に
中村先生は呆れていた。
「ちゃんと自分の目と
耳で・・
本人に確かめるべきよ。
それでひいちゃうほどの
思いなの?
朔ちゃんの気持ちは・・?」
朔ははっとしていた。
・・・ううん・・・
俺は・・・
陽和のことが・・・
好き・・・だ・・・。
目の前で・・・
その光景を見ても・・・
あきらめきれないくらいに・・。
「・・・・そう・・・か・・
そうです・・ね。
やっぱりちゃんと・・・
陽和と・・話を
しないと・・・
いけませんよね。」
「そうよ。うん。」
朔は中村先生の方を
強いまなざしでみつめ
また・・・決意した。
やっぱり・・・
ちゃんと・・・・・
陽和の口から・・・
聞かなくちゃ・・・。
陽和はといえば・・・
最初に目が合ってから
1週間の間は,
言葉を交わしたり,
朔がすみれ組をのぞいたり
してくれて・・・
陽和は
「もしかしたら・・」
という思いが
なかったわけじゃない。
だけど・・・
あれ以来,朔が
陽和の前に顔を出すことは
なくなった。
「まあ・・・
当然・・だよね。」
陽和は朔のことを
既婚者だと思い込んで
いる。
だから・・・
これも当然の結果。
朔の目が覚めたという
ことだろうと
勝手に納得していた。
それでも・・・
少しずつ動き始めていた
恋愛時計の秒針を
急に止めるのは・・・
難しく・・・
陽和の心は
ギシギシと軋んでいた。
もう少し・・・
早く・・・
朔と再会していれば・・・
でも・・そう思うってことは
やっぱり私・・・
朔ちゃんのこと・・・
今になってその思いを
自覚するなんて・・・
苦しい気持ちを
ぎゅっと押しこらえれば
押しこらえるほど・・・
朔の顔が浮かんできて
涙があふれてくる・・・。