朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
あれから1か月。

朔の姿はときどき
みかけるものの,
視線は陽和の方を向かない。

ましてや,会話を交わすこと
などない・・・

陽和の心の中は
季節外れの隙間風が
ビュービューと吹き荒れていた。



 せっかく・・
 少し近くにいると
 思って・・・うれしかったのに・・。

 でも・・・
 仕方ないか・・・。

 朔ちゃんはきっと今,
 温かい家庭に包まれて
 幸せに・・暮らしているんだから。





5月の連休が終わり,
保育園もひと段落していた。

陽和も新天地になれ,
子どもたちの性格も
すっかり把握できてきた。

陽和は,なるべく
朔のことを考えないように
考えないようにと
自分に言い聞かせていた。

 朔ちゃんは,いま,
 幸せなんだから・・・
 それでいいじゃないか。

 どうして,
 昔,好きだった人の
 幸せを素直に
 喜んであげられないのか・・・

そんな自分が嫌だった。

それでも・・・
陽和の心の中では,
朔の存在が大きく大きく
膨らんでいくばかりだった。

 どうしたらいいんだろう。
 だけど・・・
 このままじゃ
 踏ん切りがつかない・・・

陽和はそう思っていた。

 自分が次の一歩を
 踏み出すためにも・・
 もう一度きちんと
 朔と話をして・・・
 諦めなくちゃ・・
 いけない

って・・・。

< 44 / 154 >

この作品をシェア

pagetop