朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
翌日。
朔は緊張しながら
保育園の門をくぐった。
れんげ組へ行き,
古川先生に昨日のことの
お礼を告げ,由宇をあずける。
そして・・・
約束通り,すみれ組に
顔を出した。
「おはようございます。」
一か月ぶりの朝の挨拶。
「お・・・おはよう
ございます。」
陽和は覚悟していたものの
やっぱり口ごもりながら
あいさつした。
「あの・・・昨日は,
由宇が大変お世話に
・・・なりました。」
「あ・・いえ・・・
そんな・・・とんでもない・・。」
陽和は真っ赤になりながら
・・・でもちょっとうれしそうに
そう答えた。
「あ・・・あの・・・。
由宇ちゃん・・・
ホントにやさしい子ですね・・。」
そういって,また陽和は
あの・・・朔の大好きな
笑顔で朔を見つめた。
「あ・・・あ・・
ありがとう・・・。」
朔は体じゅうの血液が
沸騰するかと思うくらい
高揚した。
照れて頭をかきながらも
朔は,なんとか
陽和と・・・もっと
話したかった。
だけど・・・
陽和は勤務中だし,
周りに保護者もいる。
朔はとりあえず,
夕方にもう一度陽和に
話しかけようと思った。
「あの・・・
また,夕方に・・・。」
そういって・・・
陽和に手を振り,勤務先へ
向かった。
「朔ちゃん,
由宇ちゃん大丈夫だった?」
朔が出勤するや否や
昨日,由宇のことで
ばたばたと帰った朔に
中村先生は話しかけた。
メールで少しだけ
連絡を受けてはいたが,
「孫」のようにかわいがっている
由宇のことがやっぱり気になる。
「ああ,ご心配おかけしました。」
朔はそう言いながら
保健室に入って座って
昨日のことを中村先生に伝えた。
「へえ。」
そういって中村先生は
くすくすと笑った。
「どうしたんですか?」
「ううん。でもなんか,
よく似てるわね。
朔ちゃんにも,
航くんにも。」
「え・・・?」
中村先生は目を細めて
昔のことを思い出しながら
つぶやいた。
「正義感が強いところ。
航くんの小さい時も
そうだった。
そして,入学してきた
小さなあなたが,
転んだ女の子を保健室に
連れてきて,世話を
焼いてるのを見て,
『航くんによく似てるなあ』って
思ったのを思い出したわ。」
「ええ・・そう・・ですか。
そんなこと・・・
あったかなあ。」
朔はそう言われて
照れ臭そうに笑った。
「その女の子に昨日
また会ったんだけどさあ。」
そういわれて,朔は
はっとした。
「え?まさかその子って?」
中村先生はくすくす笑って
頷いた。
「そうよ。陽和ちゃん。」
「ああ・・・。」
朔は頬を赤らめながら
言った。
「それなら・・・
俺は,兄貴や由宇とは
違いますね。
正義感じゃないですよ,それ。
たぶん下心。」
そういって朔は
ケラケラと笑った。
「そうね。
『恋』は下心って
いうものね。」
そういわれて,朔は
ばつが悪そうに苦笑した。
「昨日,お茶したのよ。
ごめんね,朔ちゃんより先に
お茶しちゃって。」
朔は,苦笑いを浮かべた。
「うーん・・・
詳しくは言わないけど・・・
朔ちゃん・・・
アタックしてみる価値は
あると思うけどな・・・?」
「え!!!」
朔は自分の口から出た声の
大きさに,自分で驚いていた。
その様子を見て
中村先生は笑った。
中村先生は,
陽和に恋人がいないことや
陽和がおそらく朔のことを意識
していることについては,
まだ朔には話さなかった。
だって・・・そこは
自分たちで・・・
気づくべきだと思ったから。
「いや・・実は,
昨日の由宇のこと・・・
最初に対応してくれたのは
陽和だったんです。」
「え,そうだったの?」
「ええ・・・。
それで,今朝,
お礼だけは
伝えたんだけど・・・。」
「まあ!
そうなの!?
それじゃあ,お礼がてら,
食事に誘いなさいよ!」
「え・・・あ・・・
はあ・・・。」
相変わらず中村先生は
押しが強いなあ・・・と
思いながらも・・
朔は,その案に乗ろうと思った。
こんなチャンスはなかなかない。
今度こそ陽和に・・。
だけど・・・
自分がこの目で見た
あの光景が頭をよぎる。
・・・あれは・・・
恋人ではなかったんだろうか。
だけど,もう・・・考えない。
玉砕したっていいんだ。
陽和を・・・
誘ってみよう。
朔は緊張しながら
保育園の門をくぐった。
れんげ組へ行き,
古川先生に昨日のことの
お礼を告げ,由宇をあずける。
そして・・・
約束通り,すみれ組に
顔を出した。
「おはようございます。」
一か月ぶりの朝の挨拶。
「お・・・おはよう
ございます。」
陽和は覚悟していたものの
やっぱり口ごもりながら
あいさつした。
「あの・・・昨日は,
由宇が大変お世話に
・・・なりました。」
「あ・・いえ・・・
そんな・・・とんでもない・・。」
陽和は真っ赤になりながら
・・・でもちょっとうれしそうに
そう答えた。
「あ・・・あの・・・。
由宇ちゃん・・・
ホントにやさしい子ですね・・。」
そういって,また陽和は
あの・・・朔の大好きな
笑顔で朔を見つめた。
「あ・・・あ・・
ありがとう・・・。」
朔は体じゅうの血液が
沸騰するかと思うくらい
高揚した。
照れて頭をかきながらも
朔は,なんとか
陽和と・・・もっと
話したかった。
だけど・・・
陽和は勤務中だし,
周りに保護者もいる。
朔はとりあえず,
夕方にもう一度陽和に
話しかけようと思った。
「あの・・・
また,夕方に・・・。」
そういって・・・
陽和に手を振り,勤務先へ
向かった。
「朔ちゃん,
由宇ちゃん大丈夫だった?」
朔が出勤するや否や
昨日,由宇のことで
ばたばたと帰った朔に
中村先生は話しかけた。
メールで少しだけ
連絡を受けてはいたが,
「孫」のようにかわいがっている
由宇のことがやっぱり気になる。
「ああ,ご心配おかけしました。」
朔はそう言いながら
保健室に入って座って
昨日のことを中村先生に伝えた。
「へえ。」
そういって中村先生は
くすくすと笑った。
「どうしたんですか?」
「ううん。でもなんか,
よく似てるわね。
朔ちゃんにも,
航くんにも。」
「え・・・?」
中村先生は目を細めて
昔のことを思い出しながら
つぶやいた。
「正義感が強いところ。
航くんの小さい時も
そうだった。
そして,入学してきた
小さなあなたが,
転んだ女の子を保健室に
連れてきて,世話を
焼いてるのを見て,
『航くんによく似てるなあ』って
思ったのを思い出したわ。」
「ええ・・そう・・ですか。
そんなこと・・・
あったかなあ。」
朔はそう言われて
照れ臭そうに笑った。
「その女の子に昨日
また会ったんだけどさあ。」
そういわれて,朔は
はっとした。
「え?まさかその子って?」
中村先生はくすくす笑って
頷いた。
「そうよ。陽和ちゃん。」
「ああ・・・。」
朔は頬を赤らめながら
言った。
「それなら・・・
俺は,兄貴や由宇とは
違いますね。
正義感じゃないですよ,それ。
たぶん下心。」
そういって朔は
ケラケラと笑った。
「そうね。
『恋』は下心って
いうものね。」
そういわれて,朔は
ばつが悪そうに苦笑した。
「昨日,お茶したのよ。
ごめんね,朔ちゃんより先に
お茶しちゃって。」
朔は,苦笑いを浮かべた。
「うーん・・・
詳しくは言わないけど・・・
朔ちゃん・・・
アタックしてみる価値は
あると思うけどな・・・?」
「え!!!」
朔は自分の口から出た声の
大きさに,自分で驚いていた。
その様子を見て
中村先生は笑った。
中村先生は,
陽和に恋人がいないことや
陽和がおそらく朔のことを意識
していることについては,
まだ朔には話さなかった。
だって・・・そこは
自分たちで・・・
気づくべきだと思ったから。
「いや・・実は,
昨日の由宇のこと・・・
最初に対応してくれたのは
陽和だったんです。」
「え,そうだったの?」
「ええ・・・。
それで,今朝,
お礼だけは
伝えたんだけど・・・。」
「まあ!
そうなの!?
それじゃあ,お礼がてら,
食事に誘いなさいよ!」
「え・・・あ・・・
はあ・・・。」
相変わらず中村先生は
押しが強いなあ・・・と
思いながらも・・
朔は,その案に乗ろうと思った。
こんなチャンスはなかなかない。
今度こそ陽和に・・。
だけど・・・
自分がこの目で見た
あの光景が頭をよぎる。
・・・あれは・・・
恋人ではなかったんだろうか。
だけど,もう・・・考えない。
玉砕したっていいんだ。
陽和を・・・
誘ってみよう。