朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
「いただきま~す!」

美和子はいつものように
明るく豪快な声で
そういった。

美和子は一見派手で,
陽和とは真逆なように見えるが,
なぜか陽和は気が合うと
感じていた。

「おいしいねえ。」

美和子の行きつけの
串カツ屋さん。
陽和ははじめてきたが,
雰囲気がいかにも美和子に
ぴったりだなあと思っていた。

「美和ちゃんはさあ・・・
 学生時代とか・・・
 恋愛してた?」

「ええ・・・まあ・・・
 人並みには・・・。
 陽和先生は・・・?」

「・・・うん・・・
 私は・・・・

 恋愛って・・・
 したことないんだよね・・・。」

「・・・・え・・・?
 一度も・・・?」

「・・・うん。」

美和子は驚いて
目を丸くしていた。
ルックスもよく,
雰囲気もかわいらしい,
性格だっておっとりしていて
好まれるタイプだと想像できる
陽和が・・・
一度も恋愛をしたこと
ないなんて・・・。

「恋人とか・・・?」

「・・・いたことが・・ない。」

「・・・・へ・・え・・。」

美和子は串カツをほおばりながら
首をかしげていた。

そんな美和子の様子を見て
陽和はポツリポツリと話し始めた。

「小学生の頃はね・・・
 朔ちゃ・・・高比良くんが
 好きだったの・・・。」

陽和は美和子に朔との
出来事を一つずつ話した。

「・・・私・・・後悔してるの。
 あのときに,ちゃんと
 高比良くんに返事できなかったこと。

 だから・・・ちゃんと
 強くなって・・・
 自分の足でしっかり歩いて・・

 いつか再会した時に,
 『頑張ってるな』って
 言ってもらいたいって・・・

 そう思って生きてきたの。」

「・・・そっかあ・・・。」

美和子は,陽和が
仕事に真摯に取り組む様子を
思い出していた。

あの根底にも
「高比良くん」がいるのだろうなと
感じていた。

「じゃあ・・・
 もし,高比良さんが
 ・・・そう言ってくれたら・・・

 陽和先生・・・
 ちゃんと思いを伝えないと
 いけないんじゃないですか?」

「え・・・?」

「・・・今度こそ・・・
 後悔しないように・・・
 すべきだと…思います。」

「・・・そう・・・だよね。」

陽和は美和子に言われて
あらためてそう思った。

 今度会うときには・・・
 ちゃんと・・・思いを・・・
 伝えなきゃ・・・。

陽和はそう決心していた。
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