朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
「陽和先生・・・
 元気ないですね。」

「あ・・・美和ちゃん・・・。」

夕方,今日一日
様子のおかしかった陽和に
美和子が話しかけた。

「あ・・・ううん・・・
 ちょっとね。」

「どうしたんですか?」

「うん・・・実は・・・。」

そう言いかけただけで
涙がこぼれそうになる自分を
陽和は自覚していた。

「え・・うそ・・。」

美和子は金曜日の出来事を
陽和に聞き,驚いていた。

「え・・でも・・
 高比良さん・・・
 断ったわけじゃ
 ないですよね。」

「・・・でも・・・
 あれから・・・
 何の連絡も・・・来ないもの。」

「・・・・うーん・・・。」


どう見ても陽和にべたぼれだと
思っていた朔の行動に
美和子は困惑した。

「何か・・・理由が
 あるんじゃ・・・?」

「りゆ・・う・・・?」

「・・・・はい。」

「た・・たとえば・・・
 陽和先生のこと,
 真剣に考えすぎて・・・

 由宇くんのことで
 悩んでいる・・・とか・・・?」

「あ・・・うーん・・・。」

陽和は腑に落ちない顔をした。

「でも・・・いいの。

 ああやって・・・
 また友達に戻れたんだもの。


 それに・・・
 また食事に行こうって
 言ってくれたし。」

「え?あ・・・
 そうなんですか?」

「うん。」

「それって・・・
 告白の後に?」

「・・・ううん・・・
 前・・・だけど・・・。」


「うーん・・・。」

美和子は首を傾げた。

「普通・・・そういうのって
 『デートの誘い』なんじゃ
 ないんですかねえ。

 25歳の男女が
 ただただご飯を食べに
 行くというのも・・・?」

「・・・でも・・・
 だって・・そう
 なんだもの・・・。」

「陽和先生・・・・

 やっぱり・・・
 ちゃんと・・・決着,
 つけるべきじゃないですか?」

「け・・・決着・・・?」

ただでさえ,ホントは
苦しくてたまらないくらい
傷心の陽和は・・・
まださらに傷つく勇気など
持てななかった。


「う・・うん・・・。
 も・・・もう少し・・・

 経ったら・・・ね・・。」
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