朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
翌日。

朔は思い切ってすみれ組を
覗いてみた。

視線の先には,陽和がいた。

陽和はちらっと朔の方を
一瞬見たが・・・
そのまま・・・視線を
落としてしまった。


 ・・・陽和・・・。



朔は淋しい思いを抱えていた。

 俺のあいまいな態度で
 陽和を・・・傷つけている。

それは紛れもない事実で・・・

朔は・・・なんとか
もう一度,陽和と
ちゃんと話したいと思った。




夕方。
朔が由宇を迎えにいったときには
陽和は既に帰宅していた。


「・・・・あ・・。」

すみれ組にいた芽衣子と
目が合った。

「あ・・陽和先生なら・・・
 もう帰られましたけど・・。」

「あ・・・そ・・・
 そうです・・か・・・。」




由宇を肩車しながら,
今日も家路を急ぐ。

だけど朔の背中は
とてもさみしそうだった。

「ねえ・・さくちゃん。」

「ん?」


「ひよりせんせいと
 けんかしたの?」

「え・・・?
 ど・・どうして?」

由宇の直感はすごい・・。
朔はそう思っていた。

 由宇がそう思うってことは・・・
 自分と陽和の間に流れる
 空気が変化してしまって
 いるということだろう。

「ひよりせんせい・・
 きょうね・・
 さみしそうだった。」

「・・・え・・・。」

朔は息をのんだ。

 陽和を・・・傷つけている。
 陽和に淋しい思いを
 させている・・・。

 どうしてだ・・・
 お互い・・・こんなに
 好きなのに・・・

「由宇・・・それ・・
 俺のせい・・かもな・・。」

朔はそういういうと・・
堪えきれず涙を
一筋流した。

「さくちゃん・・の
 せいなの・・・?

 でも・・・
 ひよりせんせい,
 ごはんたべてるとき
 うれしそうだったよ。」

「・・・うん。
 俺のせい。」

「じゃあ,さくちゃんが
 げんきにしてあげて。」

「・・・俺が?」

「うん。
 ぼく・・・
 ひよりせんせいが
 わらってると
 うれしいから。」

「・・・・うん・・
 俺・・もだ。」

朔は由宇から
一番大事なことを
教わったような気がした。


 そうだ・・。

 俺が見たいのは・・
 
 陽和の笑顔だ。



 そのためなら・・・

 なんだってするって・・・

 思ってたんじゃないか?



そう・・・子どものころの
ように・・純粋な気持ちで・・

何も考えずに・・
突っ走ったほうが・・・

きっと・・・

いいに決まってる。




たとえそれが・・・
だめであっても・・・。
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