朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
「はあ,もう。
 見るからに緩み切った
 顔・・・。

 見てられないわね。」

中村先生は苦笑いしながら
幸せそうな朔のほうを
見遣った。

「そ・・・そんなに・・・
 ゆるんで・・ます?」

「ええ・・・。」

中村先生はくすっと
笑った。

「まあ,よかったわ。
 ずいぶんとお幸せそうで。」

「あ・・・は・・はあ・・
 おかげ・・さまで・・・。」

「ふふ・・。」

「いや・・でも・・
 ホント」

朔は急に真顔になって
中村先生のほうを向いた。

「先生のおかげかも。

 ・・・ありがとうございます。
 俺の背中を・・・
 思いっきり押してくれて。」

中村先生は声をあげて
笑った。

「あはは・・・確かに。
 でも,朔ちゃんのためじゃ
 ないわよ~!

 かわいい陽和ちゃんの
 ためだもん。」

「え・・あ・・はあ・・。」

「幸せにしてあげてよ。
 陽和ちゃん。」

「・・・も・・・もちろん。
 絶対に・・・。」

朔は強いまなざしで
そう答える。

「まあ・・でも・・・
 ホント・・・
 ・・・やっとやっと・・・
 よね・・・?」

「・・・は・・い。」

「だって,
 私が再会した時には
 すでに陽和ちゃんは
 朔ちゃんのこと
 好きなんだろうなって
 感じが出てたもの。

 あ・・もちろん
 朔ちゃんもね。」

「・・え・・そう・・・
 なんですか?」

「そうよ。
 だから誰が見ても
 あなたたちは
 相思相愛だったのに
 どうしてもっと
 早く・・・

 ・・・って今更
 いってもしょうがないか。

 とりあえず,
 ・・・よかったわ・・ね。」

「・・・。」

確かにそうだったのかも
しれないけれど・・・

朔は少し遠回りした
この時間も,
自分たちには必要だった
ようにも感じていた。




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