超能力者も恋をする

沈黙を破るようにして加藤先輩が白木さんに尋ねた。
「申し訳ないんだけど、何があったのか聞かせて貰ってもいいかな?」
「…はい。」
白木さんもボロボロ泣いてしまっていた。

先輩と一緒に白木さんの家にお邪魔して、リビングで向かい合って話す。

「美弥と会ったのは近所のコンビニで本当偶然に再開したんです。中学以来ずっと会って無かったですから。
そしたら美弥が暫く泊まる所を探してるって話をしてきて、その時の様子がちょっと元気が無くておかしかったので、家に泊まる事をOKしました。そして、美弥は荷物を持って来てこの家に来ました。」

そこでまた涙が込み上げてきて、一旦話が途切れる。

「それからです、妊娠した事を聞いたのは。病院にも行ってはっきりとわかったと。
でも、お互いフリーターの身なのに子供を育てれるのかとか、自分が母親になる事にすごく不安があって彼氏には言えないでいて、それで家出をしてきたと言っていました。
美弥自身、体の変化に気持ちが追い付いてなくてすごく不安定になっていました。だから彼とも話さないといけないのは分かってたけど、どうしても、怖くて出来なくて逃げてきてしまったと…。
でも、こんな事になるならもっと早く彼と話すように言うべきでした。もし、赤ちゃんに何かあったら、私は、私はっ…!」

言い終わって、白木さんは堪えきれず声を上げて泣いてしまった。
「白木さんのせいじゃないよ…。」
すみれは隣に寄り添って背中を摩った。

「そうだよ、白木さんのせいじゃない。だから自分を責めないで。
今回は本当に妹が迷惑を掛けてしまって、すみませんでした。」

そう言って先輩は膝に手を付き、頭を下げ白木さんに謝った。
深々と頭を下げた先輩にすみれも白木さんも驚いてしまった。
兄としての先輩をまざまざと見せられてすみれは目が離せなかった。

その後、白木さんが落ち着いたのを見てから、美弥の容体が分かったらまた連絡する事を約束して、自宅へ戻る事にした。
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