超能力者も恋をする

一気に走って行き、駅の近くまで来た所で、一回立ち止まって息を整える。顔を両手ですみれは押さえて後悔する。

(…どうしよう。見てしまった。
加藤先輩の記憶を読んでしまった…。
…私、最低な事をしてしまった。)

先輩がすみれの手に触れた時、すみれは読む気は無かったが、無意識にサイコメトリーの能力を使ってしまったようで、先輩の記憶がすみれの頭に入ってきた。

何故?、いきなり見えたのだろう?
昨日なら力を使おうと集中して、それで触れて記憶を読み取っていたのに。
さっきは全く意識なんてしていなかった。

(まさか…、力が制御出来なくなってる?)

ふっと頭を過ぎった事実に顔から血の気が引いて真っ青になってしまった。
いつも、すみれは自分の超能力は使う事を意識してから使っている。そして、制御するようにコントロールしていた。
今までコントロール出来ない事は無かったからコントロール出来ないなんて恐ろしい事だろう。
それに、先輩のプライベートを覗いてしまったようですごい罪悪感に苛まれた。

どうしよう、今の状態じゃまた無意識にサイコメトリーを使って見てしまうかもしれない。
それなのに先輩と一緒には居られない。
きっとこのまま一緒にいたら先輩に迷惑をかけるし、嫌われてしまう。
(…また、嫌われてしまう…)

過去の事を思い出してすみれの目に涙が浮かんできてあっと言う間に溢れてきた。
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