超能力者も恋をする

「加藤先輩、実は…、以前相談した嫌がらせのメールがまた来て。昨日、帰宅した私たちを撮られていました。
考えた結果、きっと先輩を好きな人の仕業だろうと思います。だから私が先輩の家にいると犯人を刺激してしまうので、私は出て行きます。マスターのお家にお邪魔出来る事になったのでそちらにいきます。
すみません、ご迷惑を掛けました。
私が出て行っても、危ない犯人なんで、先輩も十分に気をつけて下さい。」
そこまで一息に伝えた。

加藤先輩はいきなり伝えられた事実に面食らって、その場で立ち尽くしていた。

「…嫌がらせって、続いてたのか?」

「先輩に心配かけると思って言わないでました。すみません…。」
「…ごめんな、気づいてやれなくて…。」
先輩が絞り出すように呟いた。先輩があまりに悲しげな顔をするので、すみれは何も言えなくなってただ首を左右に振るだけだった。

荷物も詰め込み終わったから、スーツケースとボストンバックを持って帰ろうとした。
「下まで手伝うよ。」
先輩はスーツケースを持とうと手を伸ばしたが、すみれはその手が触れる前にバッと体を引いた。
先輩の手は触れる事なく空を切って行場の無い手を先輩は見つめた。
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