超能力者も恋をする

「えーっ、でも俺にはファイルが飛んでるのが見えたけど…。えっ？えっ？見間違え？」
目を擦りながら先輩は言った。その言葉をすみれは見逃さなかった。
（よし来た！）

「そーですよー！見間違いですって。ファイルが飛んだり跳ねたりするわけ無いですよー。
ん？先輩酔っ払ってます？酔ってるから見間違えたんですよ。」

すみれのデスクの前まで来ていた加藤先輩からはお酒の匂いがしていた。
これはラッキーだった。
自分から「見間違え」と言ってくれたなら後はそれを強調すれば大抵の人は一応納得するものだ。人間は自分に出来ないこういった超常現象は中々信じないものだから。
まして先輩は酔っているなら誤魔化す事は簡単になりそうだ。

「えっと…部長とさっきまで飲んでたんだよ。で、帰ろうとしたら携帯忘れたのに気づいて戻って来たんだけど…。」

「先輩飲み過ぎたんじゃないですか？お酒の匂いすごいですよ、ふふ。」
ダメ押しで飲み過ぎを強調して言う。