超能力者も恋をする
カランカランとベルの付いたドアを開けると、お肉の香ばしい香りが店内に漂っていた。
「いぃ〜香り!」
開けるなり1番そう言うと、カウンターの方から笑い声が聞こえてきた。
「間宮は食いしん坊だもんな。」
そう言ってカウンターに座っていたのは加藤先輩だった。
「先輩?!どうして?!」
先輩がいる事に驚いたし、笑われて恥ずかしい。
「間宮、どうしてるか気になって寄ってみたんだよ。大丈夫だった?」
久しぶりに正面から話す先輩に一気にドキドキしてしまって、頬も赤くなってしまった。
「私は大丈夫で…」
ドンっ。
大丈夫と言おうとしたが、亮太がカウンターにドンっと持ってきた紙袋を乱暴に置いた、その音でかき消されてしまった。
亮太を見てみると、何だか怒っているようで、先輩を睨み付けていた。
「こら、亮太!お客様の前で何してるんだ。皿も割れてしまうだろう!」
奥のキッチンで調理していたマスターが亮太に一喝する。しかしそれを聞き流して、亮太は先輩を睨み続けていた。
「あんたのせいで間宮は嫌がらせされたってのに、よくのこのこ顔出せるな。
あんたが今日来たせいでまた、嫌がらせが再開するかもしれないんぞ。
ちょっとは間宮の事を考えて行動しろよ!」
「ちょっと亮太君、そんな事言わなくてもいいよ。」
怒鳴り出した亮太を慌ててすみれが止める。
先輩はすみれと亮太の2人を交互に見ていた。
「確かに、言う通りだな。軽率だった。
間宮、すまない。」
そう言って先輩は席を立った。そしてすみれに近づかないよう離れながらドアまで歩いた。すみれの横に来た時、
「間宮、ごめんな。会社じゃ話す事も出来ないから、ここなら話せると思って来たんだけど迷惑かけたな。元気にやれてるか心配だったけど大丈夫そうだな。」
最後にちらっと先輩は亮太を見て行った。
「じゃあ、また会社で。」
そう言って先輩は出て行った。
バタンとドアが閉まるまですみれは先輩の背中を見送っていた。