超能力者も恋をする

今日は取引き先との大事な会議があった。
すみれは資料と会場セッティングの係りで朝から準備に忙しくしていた。

資料は一部づつ各席に置いて行く。あとはお茶も準備したらひとまず終わりだ。
「あら?もう準備終わり?手伝いに来たんだけど間宮さんも仕事が早くなったわね。」
「いえいえ、そんなっ。」
小林さんが手伝いにきてくれて、ついでに褒められてしまった。やはり褒められると嬉しくなる。
「あとは先方を出迎えね。間宮さん行ってくれるかしら?」
「はいっ!」
程なくして取引き先の方々がいらっしゃって会議が始まる。

会議が中盤に差し掛かった時、
「ちょっと、これは違う資料じゃないか?!どうなっているんだ?」
取引き先の部長が声を荒げた。
どういう事か資料を配ったすみれが見に行くと、それは配布しておいた資料とは違う、去年のデータの物だった。
(えっ?!なんで?)
確かに今年の物をまとめて資料にして配布したはずなのに!突然の出来事にすみれは真っ青になってしまった。

「これじゃ会議にならないじゃないか?どうするんだ?!」
「も、申し訳ありません。」
頭はパニックでただ謝る事しか出来なかった。相手は酷くイライラしてきている。

「すみません、説明が足りませんでした。まずは、皆さんこちらに注目して下さい。」

プレゼンしていた加藤先輩が、大きな声をだして皆の注目を集めた。
加藤先輩の後ろにはホワイトボードがあって、ボードには今年度の数字が書かれていた。
「まずはこちらのボードで説明させて頂きます。その後で資料の方は配布したいと思います。」

そう言って先輩はすみれをちらっと見てドアに目を向けて合図をした。
その合図を見たすみれは目立たないように出て行き、ドアを閉めたらダッシュでデスクへ行って、今年度の資料をもう一度コピーして作った。
大急ぎて資料を作り、会議室に持って行く。
先輩の説明も後半に差し掛かっていた。何とか間に合ったようだ。
「では、説明は以上で終わります。詳しく書いた資料を今から渡すので目を通しておいて下さい。」
そして、すみれば資料を渡し始めた。
そして議題は次の案件に代わり、何とか事なきを得たようだった。

ふっと視線を感じて見ると、先輩がすみれに向けて、小さく頷いていた。それを見てすみれも頷き返して、その後小さく頭を下げた。
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