超能力者も恋をする
「はぁ…」
すみれは大きく溜め息をついた。

今、このフロアには誰もいない。すみれ1人だけだ。
辺りをキョロキョロと見回してもう一度誰もいない事を念入りに確認する。

(よし、誰もいない。)

すみれは右手人差し指をさっと軽く払うように右に動かした。

『ザーッ。』

資料を閉まっていたキャビネットの扉が独りでに静かに開いた。
必要な資料を見つけて今度はそれに向かって意識を集中させて手を出した。

すると、整理されて並んでいたファイルの中から一つの書類の入ったファイルが前に出て来てゆらゆらと空中に浮いていた。そしてそのままスーッと流れるようにデスクの上を飛んで行き、最後にすみれの手の中にゆっくりと収まった。
そして目的の資料を探そうといそいそとファイルの中身を手に取ってページを捲っていった。
そしてすみれはそのまま何事も無かったようにまた作業に戻った。
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