超能力者も恋をする



バリバリのキャリアウーマン風の彼女は、大事そうにバックを受け取って喜んでいた。それから警察に電話をかけていた。
彼女が笑顔になったのを見て、良い事出来たなとまた嬉しくなっていたが、先輩に呼びかけられた。
「間宮、ちょっと。」

先輩が女の人に背を向けるようにして声を落として言ってきた。酷く怒った顔をしている。
「どうして、あんな危ない事をするんだ!犯人は逃げたから良かったけど、襲ってきたりする奴もいるんだぞ。
間宮の身に何かあったらどうするんだ?危険な事に自分の能力を使うなよ。」

自分では良い事、人の役に立てたと喜んでたのに先輩に怒られて衝撃を受けた。

「間宮が怪我でもしたら、俺が辛いから…。危ない事はしないって約束して。」
「…はい、約束します。」

怒られたり、心配されたり、加藤先輩に悲しい顔をして言われてしまったので、思わず涙が出てしまった。

最近、超能力で人の役に立てる事を知って確かに気軽に力を使うようになってしまっていた。
さっきのもよく考えればとても危ない事だったと、今になって怖くなってきた。調子に乗って危険な事の区別がついていなかったと反省する。

「間宮ー、泣くなよ。泣きたいのは俺もだよ。いきなり犯人に力を使ってびっくりしたんだからな。」
「ゔー、ごめんなさい。」
ポロポロ流れる涙を、先輩がゴシゴシと拭ってくれた。
荒い手つきだけれど、先輩の体温の温もりが感じられて、更に涙が出て来た。

誰かにこんなに心配される事も今まで無かった。それがこんなに嬉しい事だなんてすみれは知らなかった。
今まで秘密のものとして超能力を隠して生きてきた時には知る事の無かった気持ち。
先輩と一緒にいると今まで知らなかったたくさんの事を知っていく。

(やっぱり先輩の事が好きです。)

今は言えない気持ちをキラキラ瞬く星の下、胸の中で呟いた。

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