超能力者も恋をする

「…えっと…。」

実は、すみれはサイコメトリーの能力も使う事が出来る。
けれど過去に、ある事があってからもうずっと使っていない。自分で意図して使わないようにして、封印した。

《…キモチワルイ…》

思い出したくない記憶が蘇って来て、体温がサァーっと下がっていく。
出来ればもうサイコメトリーの能力は使いたくない。

けれど、目の前には妹さんの行方を心配している加藤先輩がいる。妹さんの安否も気になるし、先輩の役にも立ちたい。

でも、サイコメトリーを使うのは嫌だ…。

二つの感情の間ですみれは悩む。どちらにするべきなのか頭をフル回転させて考える。

(私の力があれば、何か手がかりが得られる。そうすれば、先輩の役に立てるし妹さんも見つかるかも…。
…だから今回、だけ。)

すみれの気持ちが固まった。

「…一応、出来ると思います。」
「本当かっ?!」
出来ると聞いたら先輩の顔がパッと明るくなった。

「ずっと、使ってなかったので上手く出来るかわかりませんが…。」

だいぶ久しぶりにサイコメトリーの能力を使うので、上手く行くか自信がないので控え目に言った。

「マジか!間宮、ありがとう!助かるよ!!」

加藤先輩が感謝を言いながら手をギュッと握ってきた。
加藤先輩の感情表現は大袈裟過ぎる程大袈裟で段々と慣れてはきたが、やっぱりいきなりこられるとびっくりしてしまう。
すみれの両手を一回り大きい加藤先輩の手ががっちりと握ってきた。
その力強さからどれだけ妹さんの事を心配してるのかが伝わってきたので、すみれも頑張ってやろうと気を引き締めた。

「よし、じゃあ早速で悪いけど妹のアパートに行ってみるぞ。」
「はい!」

こうして、すみれと先輩は妹さんのアパートへと向かった。
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