赦せないあいつと大人の恋をして
京都
四月の後半。ゴールデンウィーク前の土曜日曜で龍哉と京都に出掛けた。前に連れて行ってくれると言った湯豆腐と亡くなったお母様のお墓参り。
二人で一泊旅行。それは私にとって初めての経験だった。早朝から車で迎えに来てくれて高速を乗り継いで京都に向かう。龍哉のお母様のお墓参りは、やっぱり私には特別な出来事だった。昼食も済ませ夕方近くには、お母様の眠る墓苑に着いた。
「どうした? 緊張してるのか?」
ゆるやかな坂道を歩きながら龍哉が聞く。
「少しは緊張だってするけど……」
「別に、お墓の中から出て来る訳じゃないのに?」
龍哉は笑いながら言った。
「ううん。出て来ていただけるのなら、そうして貰いたいくらいよ」
「そうか」
芝生を敷き詰めた広い敷地の墓苑。墓石は、お揃いの物が綺麗に整列して並んでいる。お花やお供えは、お参りが済んだら持って帰る決まりのようでゴミ一つない。緑の多い景色も美しい。こんな綺麗な所に埋葬して貰えたら幸せだと思った。
「ここだよ」
龍哉が足を止めた墓には『西村家』と書かれていた。
「母さん、綾を連れて来たよ」
墓石に水を掛けながら龍哉が言った。
「初めまして。早崎 綾です」
私は目の前に、お母様が居るかのように自己紹介した。
二人で並んでしゃがんで手を合わせる。すると龍哉が
「母さんの前で言おうと思っていた事があるんだ。綾、結婚しよう。いや、俺と結婚してください」
急に真面目な顔をして龍哉は私に言った。
「えっ?」
「綾と結婚するって一番最初に母さんに報告したかったから」
「私、まだ返事してないけど……」
「綾はきっと俺のプロポーズを断わったりしない」
「その自信は、どこから来るの?」
「俺が綾を生涯離さないと決めてるからだよ」
「龍哉……」
「返事を聞かせてくれるか? 母さんの前で」
こんな真剣な顔の龍哉は初めて見る。
「はい。龍哉さんと結婚します」
「綾、ありがとう。母さん喜んでくれてると思うよ」
結婚。龍哉と結婚するんだ私……。もちろん遊びで付き合って来た訳じゃないけれど……。
お墓参りも済み、お母様に結婚の報告も出来た。
夕食には美味しい湯豆腐もいただいて予約してあったホテルに入る。チェックインして案内されたのは最上階の上品なドアの向こう。龍哉はスィートルームを取ってくれていた。
「綾との初めての旅行だから素敵な想い出にしたい」
二人で一緒にシャワーを浴びてルームサービスのワインで乾杯した。私はワインにも、お部屋のゴージャスな雰囲気にも少し酔っていた。
そして私は龍哉の腕の中に包まれていた……。
「綾、見てごらん。後ろ」
「なに?」
私は後ろを見た。豪華なドレッサーの鏡に私が映っている。
乱れた長い髪、白い背中……。いつか見た夢の中の女性……。あれは私だったの?
「龍哉……」
甘えるような女の声は私の中から零れたものだった。
「綺麗だ。綾……」
龍哉の愛の行為に悦びが増して行く。恥ずかしい声が私の中から零れて行くのを止めたくても止められない。
私は龍哉に激しく愛されて初めての世界に辿り着かされていた……。心臓がドキドキしている。呼吸も乱れたままで体がおかしい……。龍哉に、もたれかかり鏡を見た。
白い背中は龍哉の腕に抱きしめられている。あれは正夢……。私の体が愛される悦びを知る予知夢だったんだ。
「綾……」
龍哉のキスが、だんだん優しくなる。
*
「綾……。最高に良い女だ」
綾のすべてに溺れている。こんなに愛しい女は初めてだ。絶対に離さない。離れられない。一人の女に、こんなに執着した事など今まで一度もなかった。死ぬまで、ずっと愛し続けても足りないくらい。
「綾、愛してる。生涯ずっと大切にする。二度と泣かせない」
「龍哉、信じてる。龍哉に付いて行くから……」
二人で一泊旅行。それは私にとって初めての経験だった。早朝から車で迎えに来てくれて高速を乗り継いで京都に向かう。龍哉のお母様のお墓参りは、やっぱり私には特別な出来事だった。昼食も済ませ夕方近くには、お母様の眠る墓苑に着いた。
「どうした? 緊張してるのか?」
ゆるやかな坂道を歩きながら龍哉が聞く。
「少しは緊張だってするけど……」
「別に、お墓の中から出て来る訳じゃないのに?」
龍哉は笑いながら言った。
「ううん。出て来ていただけるのなら、そうして貰いたいくらいよ」
「そうか」
芝生を敷き詰めた広い敷地の墓苑。墓石は、お揃いの物が綺麗に整列して並んでいる。お花やお供えは、お参りが済んだら持って帰る決まりのようでゴミ一つない。緑の多い景色も美しい。こんな綺麗な所に埋葬して貰えたら幸せだと思った。
「ここだよ」
龍哉が足を止めた墓には『西村家』と書かれていた。
「母さん、綾を連れて来たよ」
墓石に水を掛けながら龍哉が言った。
「初めまして。早崎 綾です」
私は目の前に、お母様が居るかのように自己紹介した。
二人で並んでしゃがんで手を合わせる。すると龍哉が
「母さんの前で言おうと思っていた事があるんだ。綾、結婚しよう。いや、俺と結婚してください」
急に真面目な顔をして龍哉は私に言った。
「えっ?」
「綾と結婚するって一番最初に母さんに報告したかったから」
「私、まだ返事してないけど……」
「綾はきっと俺のプロポーズを断わったりしない」
「その自信は、どこから来るの?」
「俺が綾を生涯離さないと決めてるからだよ」
「龍哉……」
「返事を聞かせてくれるか? 母さんの前で」
こんな真剣な顔の龍哉は初めて見る。
「はい。龍哉さんと結婚します」
「綾、ありがとう。母さん喜んでくれてると思うよ」
結婚。龍哉と結婚するんだ私……。もちろん遊びで付き合って来た訳じゃないけれど……。
お墓参りも済み、お母様に結婚の報告も出来た。
夕食には美味しい湯豆腐もいただいて予約してあったホテルに入る。チェックインして案内されたのは最上階の上品なドアの向こう。龍哉はスィートルームを取ってくれていた。
「綾との初めての旅行だから素敵な想い出にしたい」
二人で一緒にシャワーを浴びてルームサービスのワインで乾杯した。私はワインにも、お部屋のゴージャスな雰囲気にも少し酔っていた。
そして私は龍哉の腕の中に包まれていた……。
「綾、見てごらん。後ろ」
「なに?」
私は後ろを見た。豪華なドレッサーの鏡に私が映っている。
乱れた長い髪、白い背中……。いつか見た夢の中の女性……。あれは私だったの?
「龍哉……」
甘えるような女の声は私の中から零れたものだった。
「綺麗だ。綾……」
龍哉の愛の行為に悦びが増して行く。恥ずかしい声が私の中から零れて行くのを止めたくても止められない。
私は龍哉に激しく愛されて初めての世界に辿り着かされていた……。心臓がドキドキしている。呼吸も乱れたままで体がおかしい……。龍哉に、もたれかかり鏡を見た。
白い背中は龍哉の腕に抱きしめられている。あれは正夢……。私の体が愛される悦びを知る予知夢だったんだ。
「綾……」
龍哉のキスが、だんだん優しくなる。
*
「綾……。最高に良い女だ」
綾のすべてに溺れている。こんなに愛しい女は初めてだ。絶対に離さない。離れられない。一人の女に、こんなに執着した事など今まで一度もなかった。死ぬまで、ずっと愛し続けても足りないくらい。
「綾、愛してる。生涯ずっと大切にする。二度と泣かせない」
「龍哉、信じてる。龍哉に付いて行くから……」