赦せないあいつと大人の恋をして
告白

「お茶農家の私なら釣り合うって事ですか?」

「あぁ、静岡らしいな。実家は、お茶農家なんだ」

「そうですけど……」

「やっぱり俺は高嶺の花より、お茶農家のお前がいいよ」

「バカにしてるんですか?」

「お前の方こそ、俺の事、何だと思ってた? その体で誘惑すれば、男なら誰でも引っ掛かると思ってただろう」

「それは……」
 何も言えない。弁解出来ない。あの頃の私は確かにそうだったから……。

「他のどんな男と付き合っても絶対に俺の事は忘れないように、体にしっかり刻み付けたつもりだったんだけど……。俺、お前に本気だったからさ。どんな男に抱かれても俺を覚えているように」

「えっ……?」
 そんな……嘘でしょ? 私なんかが先輩に想われてる訳ないじゃない。
 私は綾とは違う。男から本気で愛されるはずがない。

「俺、マジで告白してるつもりなんだけど。お前の返事は?」

「冗談ですよね。私をからかってるんですか?」

「本気で本気の告白してる」

 じっと私を見詰める目が怖かった。本気で告白なんか今までされた事なかったから……。

「私なんかの、どこが良いんですか?」

「遊んでやってるつもりが、男達に遊ばれてただけの女なんかのどこが? そういう事?」

「…………」
 そんなに、はっきり言わなくても……。

「いつか気が付くと思ってた。自分のしてる事の間違いに。俺だけが本気でお前を抱いてた事に気付いて欲しいと思ってたよ」

「嘘……」

「嘘じゃない。運命だと思わないか? お前が実家に帰ってて、俺が静岡に転勤になるなんて」

「そんなのただの偶然だってことも……」

「俺は嬉しかった。信用金庫でお前を見付けた時、やっぱり俺の女なんだと思った」

「勝手に決めないでください」

「さぁ。行くぞ」

「えっ? 先輩?」

「ちゃんと川村 雅也って名前があるんだ。雅也でいいよ」


 それから近くの定食屋さんで食事をして先輩のアパート……。
 ドアを開けて入るなり、いきなり抱きしめられた。

「彩花、ずっとお前が欲しかった」

 キスされてた。胸のドキドキが止まらない……。

「雅也……」

「俺たち結婚しよう」

「えっ? 今なんて?」

「お前のような女には俺がお似合いなんだよ。明日、お前の家に挨拶に行くぞ」

「何の挨拶?」

「お前は本当にバカか? 彩花を嫁にくださいってだよ」

「えっ? 本気?」

「来週の週末は四国の俺の実家に行くぞ。用意しろ」

「本気なの?」

「冗談で言えることじゃないだろう。俺たち結婚するんだ」

「結婚は……無理よ。私には先輩に愛される資格ないもの……」

「子供を堕したことか?」

「知ってるの?」

「信用金庫で、お前と親しく話してたのを、お節介なアパートのおばさんに見られてて忠告されたよ。あの子は遊びならともかく真剣に付き合うのは止めるべきだって」

「遊びでいいじゃない。私はそういう女だから……」
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