赦せないあいつと大人の恋をして
あいつの部屋で
それから風邪薬と解熱剤を飲んで
「薬で、ぐっすり眠れると思うから。明日は土曜日だし会社、休みだよな?」
「うん」
「じゃあ、安心して眠っていいよ」
「あぁ、でもベッド私が占領しちゃって……」
「ちょうど今夜中に片付けたい仕事があるんだ。気にしなくていいから。照明、ちょっと暗くするな。その方が眠れるだろ」
あいつはリモコンで、少しだけ照明を落とした。
私は熱と薬のせいで考える間もなく眠っていた。
ふと目が覚めて、どれくらい眠ったのか見当も付かない。今、何時だろう。携帯はバッグの中に入れたままだ。
よく見ると、あいつはパソコンに向かって何かしている。仕事だと言っていた。父親の建設会社で働いているんだった。
そういえば、お見合いの後、建築現場に連れて行かれた。現場監督らしき中年のおじさんと話していた。なんだか、とても活き活きして見えた。仕事を楽しんでいるように。
パソコンを切って、あいつが立ち上がった。大きな欠伸を一つ。それからベッドに向かって歩いて来る。
「あれ、起きてたのか?」
「今、目が覚めたところ。仕事は?」
「うん、片付いた。熱は……」
私のおでこに手を当てる。
「少し下がったみたいだな。汗かいただろう。着替えのスエット買って来たから着替えたら?」
「いい……」
「駄目だよ。そのままじゃ気持ち悪いだろ。さっき、そこの洋品店で、店員の女の子に見繕って貰った。スエットの上下とTシャツと楽な下着も。あぁ、俺は見てないから。タグもちゃんと取って貰ったから、すぐ着られるよ。そうだ、タオル……」
あいつは熱いお湯で濡らして絞ったタオルを二本持って来て
「俺、タバコ買いに行って来るから着替えて。玄関もちゃんと鍵を閉めて行くから安心して」
そう言い残すと出て行った。
本当は汗で、めちゃめちゃ気持ち悪かった。
コートとスーツのジャケットは脱いでいたものの、ブラウスとスカート姿。穿いたままのストッキングが汗で張り付いていた。
タオルで汗を拭いて、肌触りの良さそうなTシャツとショーツ。スエットの上下がとても楽で、気持ちまでリフレッシュ出来た。
着替えて、しばらくしたら玄関の鍵が開いてドアの開く音。
「着替え、済んだか?」
「うん」
私の返事を聞いてから部屋に入って来た。
「喉、渇いただろ」
コンビニの袋からスポーツドリンクを出して渡してくれた。