赦せないあいつと大人の恋をして
頭痛

 今、そんな事を考えても仕方ないし……。

 とにかく風邪を治すのが先決。

 昨日から、ほとんど何も食べてない。

 キッチンに立って冷蔵庫を物色。炊いた時に、お茶碗に軽く一杯ずつのご飯をラップに包んで冷凍してある。それを一つ出して小さなお鍋で煮て、これも冷凍してある刻みねぎをちらし、薄めに味付けをして玉子を落として玉子雑炊を作った。母の手作りの梅干しと美味しいお茶で食事を済ます。美味しかった。

 忘れずに薬を飲んでから、私はベッドに潜り込んだ。

 風邪を治す事だけを今は考えよう。他の事は治してから……。

 そのまま夢も見ずに熟睡していた。目覚めたのは、お昼も随分過ぎてから。ベッドで寝返りを打つ。まだ頭がボーッとしている。頭痛は少し治まったようだ。

 かいがいしく私を看病してくれた、あいつの姿が浮かぶ。あんなに優しいところもあるのに……。充分過ぎるほど気遣ってくれたのに……。

 あの男とあいつが、私の中では重ならない。

 別の人だと思えば、そう思い込めば楽になれるだろうか。

 あの男は、あいつの過去の姿。今のあいつは信頼出来る奴なんだと思い込めば……。

 副社長も生まれ変わったようにと言っていた。
 
 でも……。

 そんなに簡単に割り切れない。

 また頭痛がしてきた。もう少し眠ろう。


 土曜、日曜の二日間をそんな事を繰り返しながら過ごし、また月曜日が来た。きょうは仕事。

 朝、出勤前に近くのクリーニング店に先日のスーツを出した。ジャケットはともかく、スカートが汗もかいたし何より皺くちゃ。カシミヤ混のウールだから家では洗えない。気分的にもスッキリとリフレッシュしたかった。



 会社に着くと私は御局に挨拶した。

「先日は、ご心配お掛けしました」

「もう大丈夫なの?」

「はい。おかげさまで、ゆっくり休んで治しました」

「そう。元気になって良かったわ。さぁ仕事仕事」笑顔の御局。

「はい」私も笑顔で応えた。

 退社時間まで気分も良く、今まで以上に仕事に落ち着いて取り組めた。
< 24 / 107 >

この作品をシェア

pagetop