赦せないあいつと大人の恋をして
新築のマンション
あの時は、いかにも建築現場という雰囲気だった。でも建物の向き、高さ、周りの様子、角にあるコンビニ、間違いない。
こんなに素敵なマンションが完成していたんだ。ここから見えるのは南向きのベランダ側。でも、どの部屋もカーテンは掛かっていないように見える。まだ誰も入居していないんだろうか。
マンションを見上げながら、そんな事を考えていたら、私の目の前に車が一台停まった。
車から降りて来たのは……。あの時の現場監督さん? 立ち止まってマンションを見ていた私に
「もしかして入居希望の方ですか?」と声を掛けられた。
「あっ、いいえ」
「でも、興味あるみたいですね。何なら、中を見てみますか?」
「そんな事、出来るんですか?」
「施主さんへの引渡しは来週なんで。もう完成してますけどね。さぁ、どうぞ」
と北側の玄関のある方に案内された。
「あぁ、シマッタ。鍵を車に忘れて来た。ちょっと待っててください」
そう言い残すと彼は車に戻った。
玄関側も綺麗。やっぱり新築は良いななんて思っていると
「すみません。お待たせして。さぁ、どうぞ」
景色が良いからと五階の部屋に案内された。
「ワンルームの独身用ですけど結構広いんですよ。クローゼットもロフトもあるしエアコンも付いてます」
南側のベランダのある扉を開けてくれた。
「ベランダも広めになってます。家庭菜園も出来ますよ」
「日当たりも良さそうだし景色も良いですね」
「そうでしょう」
監督は日焼けした顔でにっこり笑った。
その時、誰かの足音が聞こえた。
「元さん」と監督を呼ぶ声……。
「坊ちゃん、ここですよ」と部屋のドアを開けて答えた。
現れたのは、あいつ。
「えっ? どうして?」
「あの時、坊ちゃんの車に乗っていた別嬪さんだとすぐ分かりましたよ。何か訳ありなのかと思って、さっき携帯で知らせたんです。こんなに急いで飛んで来るくらいだ。邪魔者は消えますね」
「元さん、ありがとう」
「いいや、今度奢って貰いますからね」と笑顔で帰って行った。
「どうした?」あいつが聞いた。