赦せないあいつと大人の恋をして
雅也への愛
十二月……。
彩花は雅也の実家近くのホテルに居た。明日の夜、雅也の親族とここで食事をする事になっていた。
結婚の前に親族に彩花を紹介するために……。
「雅也、私、大丈夫かな?」
「何か心配な事でもあるのか?」
タバコを燻らせながら。
「そうじゃないけど……」
仰向けから雅也の方に向き直って。
「従兄弟や親族はたくさん居るから、お前はニコニコしてれば間違いないよ」
「従兄弟って、どんな人が居るの?」
「う~ん。漁師もいるし医者もいるし、いろいろだよ」
「へぇ、医者もいるんだ」
「あぁ、めちゃ頭が良くってさ。東京の医大に行って大学病院に勤めてたけど、最近、帰って来て、こっちの病院に勤め始めたって聞いたけど」
「へぇ、親も医者なの?」
「いや、親は造園業? でもかなり手広くやってるから田舎のセレブってとこ?」
「ねぇ。雅也……」
「なに?」
「分かってるくせに……」
雅也は、やっぱり彩花の体に溺れているだけなのだろうかと最近ふと考える。彩花を抱きながら、ふと綾だったら、腕に中にいるのが綾だったら、どうだったのだろう? そんな事を考えてしまっていた。
*
雅也がそんな事を考えながら自分を抱いている事など思いもしない彩花は、ただ雅也との快楽に溺れて体の悦びが全てだった。それが愛情だと思っていたし、そのためにエステ通いもしていた。全ては雅也に愛されるため……。
彩花は心も体も満足して雅也の腕の中で眠っていた。
翌朝、目覚めて二人で遅い朝食を済ますと雅也は地元の友人に会いに行った。
「六時から食事会だから、五時には戻るよ。彩花はエステでも美容院でも行って磨きを掛けておけよ」
そう言って出て行った。
つまらない。彩花はそう思っていた。
午前中はホテルのショップで買い物でもして午後からエステと美容院に行こう。きょう着るドレスは、もう決まっている。淡いピンクの可愛いドレス。美容院でメイクもして貰えば後は着替えるだけ。
一人でショッピングを楽しんでいたら「彩花さん?」と声を掛けられた。